DAILY SHORT COLUMNS - Daily Business -

 
2005.04.24 ■ITの闇:
数秒で数万件 止められない名簿流出

 「数十万件のデータをいただいちゃいました」。コンピューターシステム会社に勤める男性(29)は、自慢げに話し始めた。3年前、保守を依頼されていた広告代理店のパソコンに触っているうちに、取引先の会社の顧客データを見つけた。住所、会社名、業種、公開されていない電話番号……。すぐにコピーした。「売ったら百万円以上したかな」と笑うが、問い詰めると「いたずらしただけ。絶対に売り渡したりはしていない」と繰り返した。

   ◆   ◆

 「通信販売を一度でも利用した人なら、自宅の電話番号や住所を調べられる。家族の名前も分かるかもしれない」。商品購入の勧誘電話をかけるコールセンター社長の男性(45)は、当たり前のように言う。顧客名簿を元に電話して、健康食品や教材を売っている。

 依頼主の会社から渡されるフロッピーディスクには、数万人分の顧客データが入っている。懸賞の応募者、イベント参加者のアンケート回答、時には金融機関から流出したとしか思えない資産のデータもある。フロッピーを返しさえすれば、依頼主は安心する。パソコンにひそかに保存した顧客データを消したかどうか、確認されることはない。

 こうして集めた顧客データを“クリーニング”して「宝」にする。購入商品、年齢、家族構成など独自に整理するのだ。「幼稚園児がいる」プラス「一戸建てやマンション購入者」イコール「教材」−−。小学校入学を控えて子供の教育を考え始め、しかも住まいを定めた家庭は、教材の購入に応じる確率が数段高くなる。データを加工することで、元の顧客データの入手先も分からなくなる。

 個人データを紙に印刷していた時代は、整理するのも大変だった。結局は電話帳で片っ端に電話していた。「名簿がデジタル化されたからこそ、今の商売がある」と、社長は言う。

 別のコールセンターの経営者は「悪意のある人間がかかわれば、顧客データは簡単に流出する」と言い切る。コンピューター内の重要データは、システムの不調に備えて必ずバックアップを取る。そのデータを保存する機器は、今や手のひらサイズだ。「小さなメモリースティックをパソコンにつなげば、数秒で数万件のデータがコピーできる」。そういう時代だ。

 横浜市青葉区の住宅街。大手名簿業者「ジャンボ」の7階建てビルがある。各階に監視カメラ。エレベーターも、データを扱う階には止まらない。担当者以外はデータに近寄れない構造だ。情報漏えい対策を突き詰めて建てたという。

 一方で最終的には社員のモラルが頼りだからこそ、雇用契約に漏えいの際の厳しい賠償責任も規定する。

 「個人情報は機密情報」として、同社は今月、情報源が不明確なデータをすべて廃棄した。全体の2割に上った。会社の信用のためだが、浜田真社長には懸念もある。「個人情報保護法施行で、逆にカネに直結するデータを持つアウトサイダー的業者が伸びている」

 数万人単位の個人情報漏えいが、相次いでいる。さまざまなカードの利用、行きつけの店の会員登録、プレゼントへの応募、アンケートへの回答……。日常、何気なく記入した住所、家族構成、趣味などの個人情報は、すべて企業などのコンピューターに入力され、手の届かないところで管理される。丸裸にされた私たちの情報が、漏れない保証は何もない。

〔毎日新聞〕


■みちのく銀行、131万件の顧客情報を紛失

 青森県を地盤とする地方銀行みちのく銀行(本店・青森市)は22日、同行の国内の個人や法人など全顧客分にあたる約131万件分の情報が入ったCD―ROM3枚を紛失したと発表した。住所や名前、電話番号、預金高、貸出金残高が記録されている。同行は「誤って捨ててしまった可能性が高い」とし、情報が外部に漏洩(ろうえい)した可能性は低いと説明している。

 同行によると、紛失に気づいたのは20日。青森市内の事務センターから本部の業務推進部に12日に配送したCD―ROM3枚について、受け取ったことを確認する受領書がセンターに届いていないことがわかった。

 業務推進部の職員が、同部あての社内便などが入るポストにCD―ROM入りの封筒があり、担当者に渡した記憶がある。だが、担当者は受け取った覚えはないという。

 同行幹部によると、12日は05年3月期決算の修正の発表日で、担当者は発表の対応に追われており、机近くのゴミ箱に落ちた可能性が高いとしている。ただし、封筒を担当者に渡したという職員の記憶もあいまいで、外部に流出した可能性も捨てきれない。CD―ROMの情報を見るにはパスワードの打ち込みが必要という。

〔朝日新聞〕


■ウイルスバスター、発売元がテスト怠り障害

 コンピューターのウイルス対策ソフト「ウイルスバスター」を導入したパソコンに23日午前、障害が起きた問題で、発売元のトレンドマイクロ社(本社・東京)は23日夕から24日未明にかけて開いた記者会見で、インターネット上で同社が配布したウイルスパターンファイルに不具合があったことを認め、陳謝した。配布前に必要だったテストを行っていなかったという。すでに復旧対策がとられたが、顧客からの問い合わせは7万件を超えた。

 同社によると、不具合を起こしたパターンファイルは、フィリピンにあるウイルス解析などの拠点から、23日午前7時半(日本時間)ごろ世界に同時配布された。しかし、配布前に義務づけていたテストの一部が行われず、不具合に気付かないまま配布されたという。

 主にマイクロソフト社製の「ウィンドウズXPサービスパック2」を導入しているパソコンが影響を受けた。

 同社は23日午前9時ごろ、問題のファイルをネット上から削除したが、すでに症状が出たパソコンでは、不具合を起こしたパターンファイルを削除するなどの対策が必要だという。

 同日午後、同社は個人と法人の利用者向けに、電話による復旧方法の説明を始めた。

 同社によると、91年に販売が始まったウイルスバスターは、世界25カ国の販売拠点のほか、インターネット上でも販売されている。日本国内の利用者は計約1千万人。このうち約17万人が問題のファイルを導入したという。米国の利用者からも問い合わせが数百件あった。今回のトラブルで、富山市長・市議選の期日前投票が手作業になったほか、大阪市営地下鉄では、各駅に事故情報などを伝えるシステムのコンピューターが起動しなくなった。JR東日本では旅館やホテルの空室状況を調べることなどができなくなり、複数の新聞社など報道機関でも一時、社内LANに接続しづらくなるなどの影響があった。

 同社は同日夜までに、鉄道や製薬、食品、マスコミなど、少なくとも21社でトラブルがあったことを確認した。

〔朝日新聞〕


■ウイルスバスター不具合 ユーザー苦情にPC会社悲鳴

 「ウイルスバスター」によるトラブルは23日、企業や一部官公庁だけでなく、個人ユーザーにも広がり、パソコンメーカーに電話が殺到するなどの影響も出た。このソフトを販売するトレンドマイクロ社は24日未明、テストをしないファイルを配布していたことを明らかにした。ウイルスの侵入を防ぐはずのソフトが招いた混乱に、ユーザーからは「十分検証もしていないファイルを出すなんて信じられない」と怒りの声が上がった。

 「パソコンが起動しない」「画面が白っぽく、動かなくなった」――。

 「パナソニック」ブランドの松下電器産業やNECなどパソコンメーカーの相談窓口には23日朝から個人ユーザーからの苦情電話などが殺到し、対応に追われた。

 パナソニックの大阪相談窓口センターのパソコン約100台もウイルスバスターを使っていた。午前8時半過ぎ、一斉にシステムトラブルが発生し、直後から電話が始まった。専用電話約50台が一斉に鳴り続け、担当者だけでは対応しきれなくなったという。

 担当者の一人は「自分のパソコンは起動しないし、お客様からは電話がかかってくるしで午前中はオフィスがパニックに陥った」と話した。また、NECのパソコン相談センターでも、ユーザーからの苦情は夕方までに約200件にのぼったという。

 都内に住む30代の勤務医の女性は23日朝、パソコンを立ち上げようとしたが、内部の音がうるさく、立ち上がらなかった。

 午前10時すぎ、パソコンメーカーのサポートセンターに電話をかけたが、つながらなかった。

 正午すぎ、秋葉原にあるメーカーのパソコンセンターに持ち込んだ。ハードディスクを初期化することにし、普段使っていた医療辞書ソフトや年賀状のあて名を打ち込んだ住所録ソフトのデータがすべてなくなった。

 ウイルスバスターが原因だと知ったのは、その2時間後だった。

 女性は「テストもしないファイルを配布したのはいい加減で許せない。トレンドマイクロ社は社会的責任と影響を考えていたのか」と憤る。

 トラブル対応に追われた人たちからは「十分検証してから配布してほしい」などの声が上がった。

〔朝日新聞〕


2005.04.23

The Epilogue Of The Prologue Leading To The Never Ending Story...(business & life共通)Vol.3

人物や場所や時の限定があまりされないまま、現実と空想の世界を行き交いながら、日常とも非日常とも受け取れる様々な小さなドラマが、ドラスティックながらも淡々と幾重にも織りなされていく過程において、あらゆる存在の本質や意義を考察し読者に問いかけ続ける独自の彼の作風は、前述の私の友人のように普段はあまり本を読まないような人から、既に文壇における相応な実績や立場を有する著名な作家や評論家の多くにいたるまで、また国境を越えて世界の多くの人々の支持までも得ていることは、作品としての完成度の高さを示す尺度の一つであると言えるでしょう。

知識や経験や感性、あるいは環境や社会的な立場や年齢などの様々な格差にもかかわらず、読者を選ばず誰にもそれぞれの価値観や感性により自由に理解され許容されうる作品、感じとれないあるいは解らないながらもそれなりに、また深く読み込めばそれだけまた多くの著者の思い入れに触れることもできる、そんな完成度の高い創作活動に私自身も勤しんでいきたいと常々思いはしても、それが実に至難の業であることは改めて言うまでもありません。(続く)


2005.04.22

The Epilogue Of The Prologue Leading To The Never Ending Story...(business & life共通)Vol.2

完成度の高さは普遍性にも比例する

以前何度かにわたってその一節を引用した村上春樹氏の「海辺のカフカ」について、このサイトで目にしたことをきっかけに村上氏の著作を初めて読んだというある友人が私に、「よく解らなかったけれど何だかおもしろかったよ」と言いました。

この作品の英語訳に続き、独語訳が独語圏諸国でも人気を博しているという記事を、昨年このサイトに時折一節を引用していた頃に目にしたのですが、こういった傾向の彼の著作が海外においてもベストセラーになるという事実を、何故か私はその時点では不思議に感じてしまったのでした。

そんな私自身も、彼の著作は一部のエッセイを除いて一通り読んでいるファンの一人なのですし、今や日本を代表する作家の一人と言っても過言ではない社会的評価も得ているベストセラー作家なのですから、ごく当然のことなのかと改めて思います。

彼のような作家が台頭することはもちろん、彼の著作がこれだけ世界の多くの人々に受け入れられているという事実は、私には喜ばしく思えます。(続く)


2005.04.19


The Epilogue Of The Prologue Leading To The Never Ending Story...(business & life共通)

2月中にいくつかのそれまで同時進行しつつもストップしてしまっていた各種コラムを終結させ、やはり先延ばしになっていたメールマガジン2誌の発行も追い付けるつもりで奮闘していたのですが、また諸般の事情にて今月は一度のサイト更新すらもできないまま今日に至ってしまいました。

上記の作業も残すところあと僅かになりましたし、いよいよほぼ丸4年という長きに渡ったプロローグを終結させていきたいと思います。

とは言えども、メールマガジンの読者やこのサイトのリピーターの方々には周知のとおり、このプロローグのエピローグは、これからの"What's Cool!?"の本編であるところのまさにThe Never Ending Storyにつながっていくのですから、本質的には何ら変わるところはないのですが、それでも体裁やサイト構成などは、これを機に改善していきたいと考えています。(続く)