DAILY SHORT COLUMNS - Daily Life -

 
2005.09.29
■今世紀もたない?北極海の氷、縮小加速 温暖化で悪循環か

 夏場に北極海を覆う氷の面積がこの9月、人工衛星による観測が始まった1978年以来最小を記録したことが、28日分かった。米雪氷データセンターや米航空宇宙局(NASA)などの共同グループが発表した。

 氷が減って海が太陽熱を多く吸収することで、氷の縮小に一層拍車をかける悪循環に突入した恐れが大きいという。グループは「この勢いで氷の縮小が進めば、夏場の氷の消失は21世紀末よりかなり早い時期に起こる」と警告し、地球温暖化も一因との見方を強めている。

 北極海の氷は9月に最小となり、冬に拡大するサイクルを繰り返す。最小を記録したのは今月21日で、氷の面積は532万平方キロ。これは78―2000年の夏場の平均より約20%(約130万平方キロ)小さく、日本列島ほぼ3個分が消失した計算だ。

 これまでの最小記録は02年で、同年以降、春に氷が解け始める日が早まり、昨冬は冬場の氷の回復も史上最低となるなど縮小が加速している。

 氷の縮小には複数の原因が考えられるが、グループによると、これまで重要視されていた、北極圏の大気循環により氷が北極海の外に押し流される現象の影響は、90年代後半から弱まっており、温暖化の影響が注目されている。(共同)

 北極海を覆う真っ白い氷や雪は、太陽から放射される熱エネルギーの多くを反射し、温度の上昇を防いでいる。ところが、何らかの原因で氷の面積が縮小すると、下にあった海は氷よりずっと色が濃いために太陽熱を多く吸収、蓄積する。

 氷は夏に解けても冬には回復するため、氷の縮小面積が自然の回復力の範囲内に収まっていれば問題ないが、いったん限度を超えてしまうと「海の温度上昇→氷の縮小→さらなる温度上昇」という流れが加速される。これが「悪循環」の仕組みだ。

 悪循環は北極海だけでなく、南極でも起こると指摘されている。極地で解けた氷は水になって海水位を上昇させるほか、地球温暖化を一層悪化させるため、専門家が要注意現象として注目していた。(共同)

〔産経新聞〕


2005.09.24

■コンドームをつけない男たち

 「男の子って別れるとき、『させて』っていってきて、するのは必ず中出しだもんね、何考えてるんだか」。ある女の子からのメールです。なぜ男はコンドームをつけたがらないのか。なぜ女の子はそれでもセックスするのだろう。今回のコラムは、岡山県の開業医上村茂仁さんから寄稿されたものです。

  *    *

 当院では緊急避妊薬を処方していますが、女子高生が次々と訪ねてきます。「どうして避妊しないの」と聞いても「うーん、彼氏が……いつもはすることもあるけど、今回はちょっと……」と煮え切らない返事ばかり。「あのね、避妊するかどうかは相手の誠意の表れだよ。避妊をしないということは、愛情や誠意がないと思っていいんだよ。それに男は自分が妊娠するわけじゃないから他人事だし、いざとなったら逃げるからね」「でも、彼のことは好きだし、嫌われたくないし」と。本当に今の若い子は彼氏が大好きです。

 中絶費用を彼氏が出してくれないから、自分で払って、それでもその彼氏と付き合い続けている子。二股を掛けられていることを知っていながらも付き合っている子。彼にいわれて、援助交際をしているのだけど、それでも彼が好きでたまらない子。その子いわく。「先生。彼、優しいですよ。仕事場まで送り迎えしてくれるから」。それって優しいの?

 現在、私は性教育講演に行く学校の生徒にメールアドレスを教えて、無料・匿名での相談に乗っています。その相談の中で、毎日がとても寂しいという女の子からの相談が多いのに驚かされます。家に居場所がなく、学校にも溶け込んでいない、友人とは表面上楽しく遊んでいるけれども心から打ち解けられない、そんな子が多く見られます。典型的な例として、小さい時から成績優秀で、クラブ活動にも活発、友人からはリーダ的存在としていろいろな相談に乗ってあげている子が、この『寂しい病』によくかかっています。小さいときから周囲に期待され、本人も頑張ってきたのですが、ふと我に帰って周りを見渡せば、本当の自分を心から理解してくれる人がいないことに気付くのです。そんな時、自分を好きといってくれる男性が現れるわけです。今まで寂しかった女の子は素のままの自分を出して話せる相手、自分を唯一理解してくれる相手に自分の居場所を見出します。そんな男性から性的交渉を求められれば、それに応えてしまうのは当たり前です。もちろん男性は、自分のいうことを聞いてくれる女の子がそばにいるわけですから、セックスを求めるわけですし、コンドームがなくても、生理的欲求が知性や理性に打ち勝ち(いや欲求のみかもしれませんが)、避妊なしでのセックスをしてしまいます。

 また、女性が自分でできる避妊方法で、特に10代の女の子に使用できるのはピルだけです。当院でも多くの高校生にピルを処方しています。そのときに、彼氏にはピルの服用をはじめたことは話さないほうがいいのではと指導します。なぜなら女の子がピルの服用をはじめると、よっぽど勉強して理性と知性を持った男性以外は、コンドームを使用しなくなるからです。ピルの避妊効果は100%に近いとはいえ、性感染症予防はできません。現在4人に1人が性感染症になっていることを考えれば、予防のためにもコンドームは不可欠です。でも先ほどの理由から、女の子は男性に強くそのことをいえないわけです。男は妊娠しなければ万々歳ですから、いつでも、どこでもコンドームなしでもセックスをしてしまいます。

 コンドームをつけない言い訳に「僕のはサイズが大きいから一般のコンドームは無理だ」とか「ゴム・アレルギーだから」というのがよくありますが、一度、薬局でコンドームのサイズを調べてみてください。外人男性用LLサイズ(とても同じ人類とは思えない)からSSサイズまであります。素材もゴム以外の物もありますから、彼氏に自分に合うコンドームを必ず見つけてもらってください。

〔毎日新聞〕


■世界で10億人以上が太り過ぎ WHO推計発表

 世界保健機関(WHO)は24日までに、世界中で10億人以上が太り過ぎの状態とする推計を発表した。世界の人口は約63億人(2003年)で、約6人に1人が太っている計算になる。

 推計によると、31歳以上の75%以上が太り過ぎとされる国は、女性では米国やメキシコ、エジプト、トルコ、南アフリカなど。男性ではドイツやアルゼンチン、英国、ニュージーランドなども挙げている。

 これまで太り過ぎは高所得の国で問題となっていたが、現在は低・中所得の国で急増。脂肪や糖分が多い高カロリーの食生活が世界的に広まったことや、労働形態の変化、交通の発達で運動不足になっていることが急増の原因としている。

 WHOは現在のペースで太り過ぎの人が増えれば、2015年には15億人に達すると警告。太り過ぎが要因の一つとされる心臓病や脳卒中が増える可能性も指摘している。(共同)

〔読売新聞〕


2005.09.18

■(ニュースに迫る)オウム松本被告の娘として 次女・三女インタビュー

 「学校に行きたいな」。ずっとそう思っていた。一審で死刑判決を受けたオウム真理教元代表、松本智津夫(麻原彰晃)被告(50)=控訴中=の次女と三女が朝日新聞のインタビューに応じた。父親が逮捕されてから10年。当時、「アーチャリー」の教団名で知られた三女は、大学2年生になっていた。義務教育の小中学校に通えず、高校、大学でも何度も入学を拒まれたこと、高校に受け入れてもらった時は宝くじにあたったようにうれしかったことなど、「松本被告の娘」として生きてきた思いを、3時間にわたって語った。そして、父親が関与したとされる一連の事件については「被害者の方と同様に私たちも真実を知りたい。父の証言が必要だと思う」と話した。(青池学、佐々木学)

●「差別」受け止めるのがつらかった

 東京都内の弁護士事務所。三女は明るいアイボリーのスーツ姿で入ってきた。「よろしくお願いします」。最初は緊張したように見えた。傍らに次女と弁護士が座った。三女は首都圏の大学の2年生で、心理学を学んでいる。次女は都内の大学の法学部の通信制に在籍している。

 三女は教団内の施設で生活していたため、小、中学校には通えなかった。学校に行くことへのあこがれがあったという。進学を目指し、参考書で勉強して検定試験に通ったが、複数の高校で入学拒否にあう。最後に都内の私立高が受け入れた。

 三女 「駄目だと思っていたから、宝くじが当たった気持ちだった。立派な先生がいて。反対論もあったらしいけど、率先していろいろ配慮して下さった」

 電車で片道1時間半かけて通ったことや、体育の授業やリポートが大変だったことなど、高校生活を笑顔で振り返った。

 高校で生活するうちに「どうしても心理学を学びたい」という思いを募らせていく。「人の心を知りたい」との思いからだったという。

 03年春。志望大学に合格した。ところが入学式数日前、大学から電報が届く。「入学は許可できません」

 三女 「人生の根底から覆された感じだった。どうしよう、という時期が半年続いた。でも、心理学以外に学びたいものがない、と思って勉強を続けた」

 高校時代からアルバイトも経験した。ゴルフ場のキャディーや電話でのセールス。だが、すぐに身元が知れ、やめさせられた。

 04年春にも、三女は合格した2大学で入学を拒否される。弁護士の強い勧めで、そのうちの1校を相手に、学生としての地位保全を求めて東京地裁に仮処分を申請した。生まれてからのことを約50ページ書いて添付した。

 三女 「それまで自分に対する差別は当たり前なんだ、生きているだけでましだ、と思っていた。でも文章にしてみると、体験が客観化されて、自分はこんな差別を受けてきたのか、と。それを受け止めるのがつらかった」

 同年4月、地裁は訴えを認める。大学側も司法の判断を受け入れ、三女は1カ月遅れで入学を果たした。

 三女 「大学では1人で暗く生きていこうと決めていた。でも、クラスの戸を開けたら、いきなり『おはよう』って声をかけられて。教室を間違えたと思ったけど、間違いじゃなかった。大学では差別も感じず、恵まれた環境にいます」

 相談できる友達はいますか。そう尋ねると、三女は「相談はいつでもして、と言われるけど、何を相談していいのか……」と語った。

●真実を明らかにしてほしい

 山梨県上九一色村の教団施設に警察の捜索が入り、父親が逮捕されたのは10歳を超えたころだった。その時のことを尋ねると三女は涙ぐんだ。

 三女 「みんないなくなって、廃虚のようなところで暮らして……」

 約9年後。次女は東京地裁法廷の最前列で、父への死刑判決を聴いた。

 次女 「一生会えないかもしれないと言われていて。結論は決まっていると分かっていた。やっぱりなと。あのとき父はゆらゆら揺れていて。でも、わかっていたけどすごく悲しかった」

 一連の事件から10年。遺族の悲しみと被害者の苦しみはいまだに続いている。

 「事件についてはどういうふうに受け止めているのか」と尋ねると、三女が答えた。

 三女 「真実を明らかにしてほしい。そのためには父の証言が必要だと思う」

●考えられない苦しみ、被害者の方は経験

 事件の被害者への思いを、インタビュー後、改めて三女に聞いた。

 「私が父を大切に思うのと同様、被害者の方にも同じ思いがある。考えられない苦しみを経験されている」。そして、「うまく言葉にできない」と続けた。

 大学の友人からは「なぜお父さんのために色々するの?」と質問されることもある。その時は「それでも大切な存在。できることをしたい」と答えるという。

 父親像については「厳しくもあり、優しくもあり、懐の深い存在です」と表現した。

 三女は9歳のころ、五十音の読み書きも満足にできなかったという。心配した父は、いきなり絵本100冊、国語の教科書などを買い与え、勉強を命じた。三女が怠けていると、厳しくしかられた。

 だがその後、優しく諭された。「国語ができなければ伝えたいことが伝えられない。だから大事なんだ」と。

 「だから、昔の父と、事件をめぐって報道される父と、今の父が一致しない」

〔朝日新聞〕


■闇サイト氾濫 殺人・薬物・架空口座…開設、月に万単位 法整備、急務に

 インターネット上に犯罪手口の紹介や犯罪行為まで請け負う「闇サイト」が乱立している。こうしたサイトにアクセスし、不倫相手の妻の殺害を依頼していた東京消防庁の女性職員(32)の事件も発覚。だが、月に万単位の有害サイトが現れ、警察の監視にも限界がある。犯罪に直結するかの判断も難しい。削除依頼を要請しても、アドレスや名称を変えて新たに立ち上げられるなど、「いたちごっこ」が続く。識者からは、取り締まりに有効な法整備を求める声も出ている。

 ◆「10万円」

 黒い壁紙に漂う般若(はんにゃ)の姿。「復讐(ふくしゅう)」の文字が浮かび上がる…。

 暴力行為等処罰法違反容疑で逮捕された女性職員はこんなおどろおどろしいサイトにアクセスしていた。「代行費十万円より」といった料金設定もされていた。

 「雨後のたけのこのように次々と新たな有害サイトが開設されるのが現状」。サイトを監視している警視庁ハイテク犯罪対策総合センターの幹部は指摘する。

 薬物密売に架空口座売買…。警察当局は有害サイトを見つけると、サイト管理者やプロバイダー(接続業者)に削除依頼を要請する。一カ月に万単位で誕生するとされる有害サイト。警視庁では一カ月あたり千件以上の削除依頼を要請するが、同庁幹部は「監視が追いつかない」と話す。

 財団法人インターネット協会の主任研究員、大久保貴世さんは「サイトを閉鎖してもアドレスや中身を変えて再開するケースも多い。対策は難しい」と背景を解説する。

 ◆情報提供

 氾濫(はんらん)する「有害」「闇」サイト対策として、警察や行政はアクセスを阻む「フィルタリング」(情報選別)に期待を寄せる。警視庁は先月から、フィルタリングソフト開発会社など七社に、約六百八十件の有害サイト情報の提供を行った。提供された情報は児童ポルノや爆弾製造方法の紹介、自殺サイトなど。「一般ユーザーが犯罪行為とかかわる機会を少なくさせるのが狙い」

 東京都でも、プロバイダーに対し、十八歳未満の青少年が利用する場合には、フィルタリングソフトを提供する努力義務規定を新設した改正青少年健全育成条例が来月一日から施行される。

 ◆「何でも」

 だが、課題も山積している。

 フィルタリングソフトは小中学校などで普及が進む一方で、一般家庭の利用率は10%程度。大久保さんは「フィルタリングそのものの認知度が不足している。家庭の有害サイトへの危機意識は低い」と指摘。対策を進める内閣官房IT担当室も「フィルタリングソフトの普及促進は有害サイト対策の主要課題の一つ」と認知不足を認める。

 警視庁幹部は「犯罪に直結するサイトかどうかの判断は難しい。『何でもやります』と書いてあっても、『何でも』だけで犯罪に直結するかは判断できない。表現の自由を制約する恐れもあり、削除を要請できないケースもある」との問題点をあげる。同庁のこれまでの削除依頼の要請は、目視で明らかな違法性が判断できた「振り込め詐欺」対策などが中心。女性職員がアクセスしたサイトは、削除要請の依頼やフィルタリングソフト開発会社への情報提供に入っていなかった。

 ネット犯罪に詳しい紀藤正樹弁護士は「ネット犯罪は展開が速いのに法整備が遅れている。今のネット環境に適合した法整備を急ぐべきだ」と話している。

                  ◇

 《フィルタリング》 インターネットのサイトを一定の基準で評価・判別し、架空口座、薬物、アダルトなどの有害なサイトを選択的に排除できる仕組み。パソコンに専用ソフトを入れ、プロバイダーの専用サーバーを利用するなどして導入できる。携帯電話各社も、フィルタリングのサービスの導入を進めている。

                  ◇

 【サイトを利用した今年の主な事件】

  4月  名古屋市で、会社員の夫を殺害する実行役を見つけるため、出会い系サイトで知り合った男に殺害を依頼した妻(当時48)を殺人容疑で逮捕

  6月  山口県光市の県立高校で、ネットを参考にして爆発物を製造した男子生徒(当時18)が、授業中の教室に爆発物を投げ込んだとして、傷害容疑などで逮捕

  7月  「闇の職業安定所」と呼ばれるサイトでひったくりの共犯者を募集し、ひったくりをした東京都小平市の無職少年(当時17)を窃盗の現行犯で逮捕

  8月  自殺サイトで知り合った男女3人を殺害したとして、大阪府堺市の派遣会社社員の男(当時37)を殺人容疑で逮捕

〔産経新聞〕

 


2005.09.02

■性犯罪阻止の「コンドーム」開発、南アの女性発明家

南アフリカ・クレインモンド(ロイター) 性的暴行の多発が重大問題になっている南アフリカで、女性発明家のソネット・エーラーズさん(57)が、女性を守る特殊コンドーム「rapex」を開発、8月31日にお披露目した。

「rapex」は、生理用タンポンのように膣内に挿入して使うもので、暴行犯の性器に「噛(か)みつく」ような仕掛けが施されている、という。

エーラーズさんは「これまで女性を性的暴行から守るものがなかった」 と指摘し、「rapex」は、暴行者の性器に激痛を与えるため、女性がすきを見付けて逃れることが可能で、性犯罪を減少させ、妊娠やエイズ、性病の感染を防ぐことにもつながるとした。

このコンドームは、病院でしか取り外しができないようになっていることから、犯罪者の特定にも役立つとしている。

南アフリカ政府の犯罪統計によると、同国では毎年5万件以上の性的暴行被害が届けられている。子供や知人の間の暴行は、ほとんどの場合、泣き寝入りとなるため、実際の被害件数は4倍にも膨れ上がるとみられている。

「rapex」の使い心地については、複数の女性がプラスチック製の男性性器の模型でテストしてみたものの、生身の男性での試験はまだだという。来年から生産を予定している。

一方、同国の性犯罪防止団体などは、「rapex」が犯罪者の怒りを加速させ、女性への暴行がさらに増える恐れがある、と批判している。

〔朝日新聞/ロイター〕


2005.09.01


■「グラリ」! どうする? 新しいビルに避難/線路歩行は厳禁


 地震の恐怖が収まることのない日本列島。ここ1年で起きた地震では、エレベーター停止やガラス落下など、思わぬ被害がクローズアップされた。ケースごとの外出時の具体的な「そのときどうする」をまとめた。(森浩)

 ≪エレベーター≫

 7月に首都圏を襲った最大震度5強の地震では、6万4000基のエレベーターがストップ。復旧までに、かなりの時間を要したケースもあった。

 日本エレベータ協会(東京)によると、全国のエレベーター数は約60万基。そのうち約半数が大きな揺れを感知した際、最寄りの階に自動的に停止する「自動停止装置」を備えている。

 ただ、「自動停止装置」が作動してストップした場合、復旧するには保守会社が点検して、手動でロックを解除する必要がある。「その係員の数は首都圏で2500人程度。動かなくてイライラする気持ちは分かるが、迅速な対応はなかなか難しいのが現状」と同協会部長の竹内芳文さんは語る。

 さらに今回の地震では、「自動停止装置」が作動する前に別の「緊急停止装置」が働き、最寄り階に止まる前にエレベーターがその場で停止し、機能の不備から閉じ込められてしまうケースが78件報告された。国土交通省と業界では、新たな安全装置開発に取り組んでいる。

 「出られなくなったら、インターホンで外部と連絡を取ってみる。ワイヤが切れてエレベーターが落下することはまずないので、冷静に対応してほしい」(竹内さん)

 ≪徒歩≫

 3月に震度6弱を記録した福岡県西方沖地震では、オフィスビルから割れたガラス片が雨のように地上に降り注いだ。地震後、国交省が追跡調査した結果、全国の商業地でガラスが落下する危険性の高いビルが1400カ所あることが分かった。

 「落ちてくるガラスはまさに刃物。すぐにしゃがみこんではいけない。やはり建物に逃げ込むのがベター」とするのは、財団法人市民防災研究所調査研究部長の細川顕司さん。

 細川さんによると、大きな揺れでガラスが割れた際、建物の半分程度の距離まで破片が飛び散る可能性がある。逃げる際は手やバッグを頭上にかざし、落下物を防ぐことが大事と説く。

 細川さんは「バッグなどを頭に密着させすぎると、落下物が貫通して頭にけがをする可能性がある。ちょっと空間を作ったほうがいい」とアドバイスする。

 ただし、ビルに飛び込んでも、ビルそのものが古ければ倒壊する可能性もある。

 国交省の調べによると、全国の住宅以外の建築物340万棟のうち、120万棟が震度6強−7の地震で倒壊する可能性があるという。「丈夫そうな新しい建物を日ごろからチェックしておくこと」(細川さん)

 ≪駅、道路≫

 7月に首都圏を襲った地震の際、交通機関がマヒして“帰宅困難者”が続出した。

 「『家までの近道』と判断して、線路を歩くことだけは避けてほしい」と地下鉄「東京メトロ」の関係者。急に電車が走行することもあれば、丸ノ内線や銀座線では線路脇に600ボルトの電気が流れていることから危険がともなう。駅構内では地震発生時に線路に投げ出されないよう、普段から線路と一定の距離を保つことが大事だという。

 また車の運転中は、「ゆっくり車を車線の左側に寄せて停車し、キーを付けたまま離れるのが基本」(日本道路公団)。高速道路ではとにかく高速で乗用車が突っ込んでくることがあるので、道路から早く離れることが重要だ。

〔産経新聞〕