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2004.08.29 ■ 人生における成功者の定義と条件:特別号

■ はじめに(本書より)  村上龍

 『13歳のハローワーク』という職業紹介絵本を作る過程で、またその出版後にいろいろなインタビューに答える中で、いろいろなことを考えた。「仕事」がその人の人生を支えるのだという単純な事実の再確認から、何をしたいのかわからない人にはアドバイスのしようがない、というような発見までさまざまなことだ。そして、日本社会で流通する言葉と概念の文脈が古いままだということもよくわかった。

 特に金融・経済の領域で顕著だが、日本社会の価値観・システム・考え方は90年代からはっきりと変化し始めた。商売をする人たちは、とにかく利益を出さなければいけないので、古いシステムや考え方をもっとも効率的で合理的なものにシフトする。そういう人たちの嗅覚と実行と成功によって、社会全体のシステムや考え方も少しずつ変わっていく。

 だがその変化に、言葉や概念がついていけない。これまで何度もエッセイなどで書いてきたが、わたしたちはいまだにリスクやインセンティブやコアコンピタンスというような英語を日本語に翻訳することができない。リスクは、単に「危険なこと」ではなく、人を惹き付ける何かに潜むものというニュアンスが含まれている。地雷原を歩くのはリスクが大きい、という言い方は変だ。たとえば地雷原の中に大昔の宝物が埋まっていて、それを掘り出そうとするような場合に、地雷原は初めてリスク要因として成立する。

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 社会のシステムや考え方が変化すると、人びとの価値観や判断基準や生き方の選択も変化していく。終身雇用が当たり前、という考え方が過去のものになろうとしているが、それは雇用システムだけの問題ではなく、生き方の根幹に関わることなので、当然人びとの考え方や価値観も変化を迫られることになる。だが、そういった変化に言葉や概念はうまく対応できていない。リスクという言葉を日本語に翻訳できないのは、会社への忠誠心や献身と引き替えに会社に庇護してもらうのが当たり前という社会では、人を惹き付ける何かに潜む危険・不安要因という概念が存在しなかったからだ。

 死語になっているわけではないが、その概念が空洞化している言葉もある。その典型は「普通」だ。普通の女子高生、と聞いて、どんな女の子を思い浮かべるだろうか。また普通のサラリーマンと言われて、どんな青年やおじさんを思い浮かべるだろうか。たとえば、「普通の女子高生」というのはバージンだろうか。また「普通のサラリーマン」の年収はいくらくらいだろうか。その二つの問いに対してはきっといろいろな意見があるだろう。いろいろな意見があるということは、社会的通念となるような基準がもはや存在しないということだ。

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「普通」と同様に、「成功者」という概念にも空洞化が見られる。それは「成功」という言葉に、近代化途上の価値観が刷り込まれているからだ。近代化と、その最終段階だった高度成長時において、成功というのはおもに経済的な成功を意味した。成功者というのは、法の範囲内で平均以上に金を儲けた人と出世した人を指す言葉だった。ただし、今その概念が変わってしまっているわけではない。平均以上に金を稼いだ人、会社の社長や役所の局長になれた人は、今でも成功者だと見られるだろう。金を稼ぐとか、出世するというのは、現代でも成功の範疇に入る。問題は二つある。一つは、金を儲けたり、出世するために何が必要かということだ。そしてもう一つは、現代における人生の成功者というのは、平均以上に金を稼いだり出世する人だけを指すのか、ということである。

 かつては、平均以上の金を稼いだり、会社や役所で出世しようと思ったら、いい学校に行くことが必須だった。中卒で巨万の財を成した人もいるが、成功者としては主流ではない。明治の開国から高度成長まで、成功するためにはいい学校へ行くことが必須の条件だったのだ。いい学校へ行って、いい会社や権威のある役所に入る、それが成功者のモデルで、女性はそういう人のお嫁さんになるのが幸福への道、という時代が本当に長く続いた。

 日本全体が貧しくてモノがなく、したがって巨大な需要があった高度成長が終わると、当然高度成長用の経済モデルは衰退し、新しいスタイルが模索される。資本主義社会の企業が利益を追求する義務を負う限り、その是非はともかく終身雇用が幻想となっていくのも必然的なことだ。いい学校に行っていい会社に入れば一生安心という常識が成立するためには、終身雇用制が前提となるが、そのあたりのことについては前述の『13歳のハローワーク』の「はじめに」というエッセイに詳しく書いたのでここでは繰り返さない。

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 現代では、平均以上に金を稼ぎ、出世する確実な方法がない。つまりいい学校に行って、いい会社や権威のある役所に入っても、成功者になれるかどうかわからない。それが、今の子どもたちに勉強へのモチベーションを失わせている原因のほとんどすべてだ。『13歳のハローワーク』では、おもに「職能」や「技術」を取り上げだ。つまり、自分が興味を持てる分野で専門的な知識や技術を身に着けたほうが有利だ、ということを示した。「興味がある分野で」という条件をつけたのは、人間は興味がない分野で努力を続けるのがむずかしいというシンプルな理由による。嫌いなことをイヤイヤながらやるよりも、好きなこと、興味があることをワクワクしながらやるほうが集中できるし、効率が上がる。

 そして重要なのは、好きな仕事、興味のある仕事というのは、それをやっているだけで充実感があるということだ。自分が好きな仕事と出会うのは簡単ではないが、嫌いな仕事や向いていない仕事は、続けるのが苦痛なのですぐにわかる。続けるのが苦痛でも、終身雇用が機能していたころのようにその職が安定しているのだったら合理的かも知れない。だが、いつリストラされるかわからないというような状況で、苦痛な仕事を続けることには合理性はないだろう。

 わたしは『13歳のハローワーク』の中で、仕事・職業を次のように定義した。生きていく上で必要な「生活費」と「充実感」を得るものということだ。成功者の新しい定義と条件のヒントはこのあたりにある。

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 成功という言葉には「成就」というニュアンスが含まれている。大リーグマリナーズの長谷川投手があるエッセイに次のような意味のことを書いていた。「自分(長谷川投手のこと)とイチローは、そのシーズン中、ある目標を決めてそれが達成できたら『成功』だという風に決めた」

「目標の達成」を成功だと自己評価するというのは確かにわかりやすい。成功というのは目標を達成することだというのは説得力がある。だがそのためには、自分で目標を設定しなければならない。当たり前のことだが、自分で自分の目標を設定できなければ達成もあり得ないからだ。

 しかし「自分で自分の目標」を達成するということを、会社や役所内、あるいはプロジェクトチーム内ではどう考えればいいのだろうか。ある会社の営業部で売り上げの目標が提示されたとする。一社員が、自分の目標というのものを設定できるのだろうか。あるいはサッカーの五輪日本代表の目標が最低でも銅メダルだったとする。各選手は自分の目標というものを設定できるのだろうか。

 それは営業もサッカーでも、まず自分ができること、やらなければならないことは何か、を考えることから始まるだろう。やるべきことが決まると、自分の目標も浮かび上がってくる。営業だったら一日に最低20箇所の得意先を回ることかも知れないし、サッカーのFWだったら前半10分で枠に行くシュートを一本必ず打つ、みたいなことかも知れない。これからの優良企業は、部や課やプロジェクトの目標に対し、自分なりの目標を設定する能力のある人材を求めるだろう。それはプロジェクトを理解する能力があるということだからだ。

 自分で自分の目標を設定するためには、自分の仕事・職業に対し主体的に向き合っていなければならない。そしてその仕事・職業に主体的に向き合うためには、やはり興味があって、自分が好きなもの、自分に向いたもののほうが有利なのだ。

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 人生の成功者というのは、その人の人生における目標を達成した人、という言い方ができるかも知れない。では人生における目標とは何かというと、それは、とりあえず生活に困らない程度の生活費を稼ぐことができて、かつ充実感のある仕事を持っていることだと思う。わたしは一児の父親だが、子どもにはそういう風に生きてもらいたい。ただしわたしの子どもは精神的に自立していなければやっていけない家庭に育ったので、当たり前のことを言う必要はない、余計なお世話だと言うだろう。

 しかし、生活費と充実感だけでは何か足りない気がする。人間は一人だけで生きていくわけではないからだ。今までの常識だと、暖かで幸福な家族・家庭、ということになるのかも知れない。だが、家族に限定するのはリスクがあるし、家族を絶対視するのも無理がある。現代の核家族は近代化・高度成長の産業形態の要請により、農漁村から都市部への労働力移動によって必然的に構成されていったもので、今後家族のあり方が変化することが予想されるからだ。

 どういう風に変化するのかは誰にもわからない。だが、家庭・家族を作らなければ幸福はないというような考え方は希薄になっていくべきだろう。必要なのは、お互いに信頼できて、相談できて、しかもその中で癒される小さな共同体、のようなものではないだろうか。それは結婚という形を取らず共に生きる男女かも知れないし、たとえばNPOなどで共に活動した仲間かも知れないし、昔からの友人同士かも知れない。

 人生の成功者というのは、「生活費と充実感を保証する仕事を持ち、かつ信頼できる小さな共同体を持っている人」という仮説を立ててみたい。旧来の成功モデルが機能しなくなっている今、あえて成功者の新しい定義と条件を示すことは無意味ではないと思うからだ。


『人生における成功者の定義と条件』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140808829/jmm05-22


JMM [Japan Mail Media]  


2004.08.25


ブログ荒らしに辟易

昨年末のクリスマスイブに新設し、毎日更新をテーマに日常のスナップフォトと英語によるコメントを綴るフォトブログサイト"CLIPS"に対するブログ荒らしに、このところすっかりと辟易しています。

ブログ荒らしといっても、このブログサイトや運営者である私に対する非難中傷の類のものではなく、いわゆる自分達の商用サイトなどへのビジターの誘導を狙った宣伝テキストやHTMLタグの書き込みです。

こうした類の書き込みは、かねてより通常のBBSやメーリングリストなどへの投稿ででも広く問題にされてきましたし、私のブログサイトにも以前から時々は行われていました。実行者にとっては無償での宣伝ができるわけですから、厚顔無恥な輩にとってはやればやるだけ効果があがるとばかりに日々書き込みに勤しむのでしょうし、最近では機械的に不特定多数のサイトへの書き込みを行うプログラムも開発されているようです。(続く)


2004.08.24

■企業はWindows XP SP2をどう導入すべきか
(Paul Thurrott)

 8月6日金曜日,米Microsoftはついに長い間待ち望まれたWindows XP Service Pack 2(XP SP2)を完成させた。名前はサービス・パックだが,XP SP2は単なる修正モジュールの集合ではない。多くの広範なセキュリティ機能が追加されており,新しいメジャーなバージョンのWindowsとして扱うべきである。ライセンス費用は不要だが,企業はこのサービス・パックを評価・導入するときに本当のコストを実感するはずだ。Microsoftはシステムをより安全なものにするため,特定の技術を壊すという通常と違う手順を踏んだ。XP SP2で行われた仕様変更はカスタム・アプリケーションやサービスで大きな問題を引き起こしかねず,そこが負担になる可能性がある。

 XP SP2による機能の変更点は多い。その詳細は,SuperSite for Windowsにある解説「Windows XP Service Pack 2 with Advanced Security Technologies Review」を見てほしい。この解説は個人ユーザー向けだが,企業ユーザーにも参考になるはずだ。同様にここではXP SP2に関してMicrosoftが計画した公開方法の詳細も省略する。この点についてはWinInfo Daily UPDATEの私の記事「Microsoft Releases Windows XP SP2; Public To Get Update Over Time」 から情報が得られる。

 ここでは,企業がXP SP2を導入する場合に絞って,できるだけ早くこのサービス・パックを導入するための実践的な戦略を提案する。仕様変更による非互換性の問題を別にすれば,企業はできるだけ早くXP SP2を導入するべきだろう。XP SP2は以前のサービス・パックに比べずっとセキュリティが高く,より設定しやすい。XP SP2では600以上の新しいグループ・ポリシー・オブジェクト(GPO)が追加されている。これによりGPOの数は,従来のWindows XPの倍ぐらいになった。さらに,Microsoftはいくつかの導入ツールの新しいバージョンも提供している。

XP SP2が引き起こす問題の多くは非互換性が原因
 まず企業は,XP SP2の互換性について厳しいテストを実施してほしい。XP SP2が引き起こす問題の多くは非互換性が原因である。非互換性はいくつかのパターンに分けられる。大抵の商用ソフトウエアはXP SP2と一緒にうまく動くはずだ。しかし,ネットワーク・アプリケーションはWindowsファイアウオールという新しいパーソナル・ファイアウオール機能で警告が出る可能性がある。また,XP SP2ではInternet Explorerなどの機能がロックダウンされている。そのロックダウンされた機能を使うカスタム・アプリケーションやイントラネットやWebサイトは警告が出て不便になる場合がある。ロックダウンされた機能に関するより詳しい情報は,XP SP2に関するMSDN(Microsoft Developer Network)の資料「Windows XP Service Pack 2 - Security Information for Developers」 を参照してほしい。

 セキュリティ関係の機能はより厳しく稼働状況がチェックされる。ユーザーが自分のシステムのウイルス対策ソフトを止めたり,最新のセキュリティ・パッチを自動適用する設定にしていなかったり,Windowsファイアウオールを無効にしたりすると,XP SP2は警告を出す。最初はちょっと面倒だと思うだろう。Windowsファイアウオールを有効にしていても,パソコンの外から中に進む方向の通信を検知すると,XP SP2はダイアログ・ボックスを出す。これは慣れるしかない。

 企業ネットワークでは,XP SP2は現在のXPとあまり変わらないように振る舞いつつ,何種類かのネットワーク攻撃を防げるようになっている。しかし,これまで指摘したようにXP SP2のWindowsファイアウオールは,コンピュータの外から中に入る(インバウンドの)通信はチェックするが,中から外に向かう(アウトバウンドの)通信はチェックしない。そのため,なんらかの方法でワームに感染したPCが,ほかのPCに対して攻撃を仕掛ける可能性がある。これを防ぐにはインバウンドの通信に加えアウトバウンドの通信をチェックするサード・パーティ製のパーソナル・ファイアウオール・ソフトを使ってXPのWindowsファイアウオールを補完すべきだ。

 繰り返しになるが,要するに,XP SP2は次のようなものだ。大抵の会社にとって圧倒的にプラスになるアップデートだが,互換性に関してはいつもより厳しいテストをする必要がある。

XP SP2の大量導入にはSP2対応のツールを使う
 XP SP2には一度にまとめて導入する方法も用意されている。まず統合インストールまたはスリップストリーム・インストールと呼ばれるXPとSPを同時にインストールする方法がある。共有フォルダを使う場合とCD-ROMを使う場合があるが,基本的にこれまでのサービス・パックと手順は同じだ。私は先週末に両方を実験して,いずれもうまくいくことを確認した。XPの無人インストールを行うためのGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)ツールであるセットアップ・マネージャは,これまでと同じように動く。より規模の大きな導入作業を行うときは,Active Directory(AD)のソフトウエア配布機能やRIS(リモート・インストレーション・サービス)が利用可能だ。テストはしていないが,私が理解している限りでは,XP SP2はどちらでも配布できるはずだ。

 一方,Sysprepというツールは変わった。SysprepはカスタマイズしたWindowsのインストール・イメージの作成を支援するツールである。XP SP2では最新のXPに加え,Windows Server 2003にも対応するSysprepの新版が提供された(もっと新しいバージョンのSysprepも2005年にWindows Server 2003 SP1と一緒に提供されると私は聞いている)。XP SP2のインストール・イメージを作成する場合は,XP SP2のCD-ROMに付属するバージョンのSysprepを使わなくてはならない。

 さらに,ご存じのようにWindows UpdateやMicrosoft Systems Management Server(SMS)経由でもXP SP2を配布できる。MicrosoftはSMSによる配布に関するシンプルな解説「Systems Management Serverを使用してWindows XP Service Pack 2 (SP2) をインストールする方法」 をWebサイトで公開している。

十分確認してできるだけすぐに導入しよう
 XP SP2は技術的には完成しているが,公開されてあまり時間がたっていない。きっとみなさんはその変更点や導入方法の選択に私自身と同じように悩んでいると思う。だが私はこう強調しておく。できるだけ早くXP SP2を導入すべきだ(導入してもミッション・クリティカルなソフトウエアやサービスの実行を妨げないことを十分確認してできるだけすぐにである)。この夏,テストを行ったら,どうか私に情報を提供してほしい。みなさんが得た経験に非常に興味がある。

〔ITPro〕


2004.08.18

■ミサワホーム創業者・三沢千代治氏が名誉会長退任判明

 ミサワホームの創業者で、アイデアマンとして知られたミサワホームホールディングス(HD)の名誉会長、三沢千代治氏(66)が、8月6日付で退任していたことが18日判明した。

 ミサワはUFJ銀行の大口融資先の一つで、UFJは経営再建のためトヨタ自動車にミサワへの出資を要請する検討を始めている。トヨタ自動車との提携に難色を示していたとされる三沢氏の退任には、トヨタの支援を受けるための「地ならし」との見方も出ている。

 ミサワホームHDは、退任の理由について、「経営への助言を受ける名誉会長としての嘱託契約が6月末で切れたため」(経営戦略部)と説明している。ただ、退任はミサワ側から申し入れたもので、ミサワが創業者との「決別」を明確にした形だ。

〔読売新聞〕


2004.08.14


■日本オラクル、全社員に在宅勤務制

 日本オラクルは来春をメドに、全社員1448人を対象にした在宅勤務制度を導入する。最低週1回程度の出勤を義務づけるが、それ以外は自宅やホテル、海外などどこでも自由に仕事をできるようにする。出社の手間を省いて業務効率の向上を図るとともに、大規模災害などでオフィスが閉鎖された場合でも業務を継続しやすい体制を確保する。

 大手企業の間で特定の職種や職場で在宅勤務制度を導入する動きは広がっているが、全社員に適用するのはまだ珍しい。9月1日から顧客サポート担当部門の約300人を対象に導入、経理、総務など他の部署に順次広げていく。早ければ来年3月までに全部署に導入する。これまでは育児や介護などの事情で通勤が負担になる社員だけに限定して在宅勤務を認めていた。

〔日本経済新聞〕


2004.08.13

出戻りラッシュVol.51

人それぞれの才能や日々の努力によって培われる能力の差は、それぞれの人のマネージメントメンタリティーの及ぶ範囲の差としてのみ顕われるべきものであって、一人の成人として社会生活を営んでいくうえでは、あくまで全員が最低限度自らをマネージしていくことが不可欠であると、常日頃から私は考えています。

しかし、私達の社会構造の根幹は、封建時代や軍事体制下の時代からほとんど変わってはいませんし、それは、大多数の一個人の意識が何時(いつ)の時代においてもほとんど変わることのないことに起因していると言えます。(続く)


2004.08.08

出戻りラッシュVol.50

マネージメントメンタリティーつまり経営者としての発想やセンスをあらかじめ備えている、それは第三者に左右されない絶対的価値基準を自らのあらゆる言動の規範とし、そのすべてに対する自己責任を徹底できる人達といえますが、残念なことにそうした人達にはなかなか出会えるものではありません。

何も特別な能力というわけではありません。最低限自らの在り様の範囲に限ったことでよいのですから、本来社会生活を営む私達全員にとっての常識であるべき必須条件と言っても過言ではないと思います。(続く)


2004.08.02


■【〈コラム〉経済気象台】  
消費という一票

 先日、老夫婦が営むカレー店が店を閉じた。おいしいカレーを食べさせてくれる店だった。しかし、街の中心から少しはずれていたせいか、店が一杯だったという印象はない。それが理由だとしたら、もう少し頻繁に通うべきだった、という悔いが残る。近頃、気に入った店が知らぬ間に姿を消していることが少なくない。

 参議院議員選挙は、それなりに話題を提供して幕を閉じた。さて、私たちは、選挙で国の政治を任せる人を選ぶのと同様、毎日、消費という形で生活に欠かせないモノやサービスを選ぶ。機能や味のよさ、デザイン、お店の人の対応など、選ぶ基準は人によって様々だが、多くの場合、お気に入りになった商品をある期間続けて買うことになる。しかし、消費者は安く売っていたなどの事情で、時に浮気心を起こして別な商品に手を伸ばし、つい縁遠くなることがある。

 結局、価値を再確認し、お気に入り商品のもとに戻るのだが、何人かの浮気現象が続くと、その過程は一時的にでも、お気に入り商品の売り上げを下げることになる。そして、流通もメーカーも、お気に入りの商品を最近売れなくなった商品として受け取る。特に、コンビニなどでは、売り上げの減った商品を敏感にデータから割りだし、店の棚からはずす。ある日、お気に入りの商品を買いに店に来た消費者はそこで、その商品がないことに気づく。お気に入りのレストランの場合も同じだ。

 メーカーなどにとって、最大のアンテナは、売り上げの数字である。その数字を参考に、商品の生産を中止し、あるいは拡大する。また、そこから消費者の嗜好(しこう)や意見をくみ取り、新商品を開発する。日々の消費は、商品やサービスの明日を決める重い一票である。もちろん、毎日の買い物にそんなに神経を使ってはいられない。しかし、店に並ぶ商品の風景だけでなく、店が並ぶ街の風景までも、日々の消費が生み出している。(深呼吸)

〔朝日新聞〕