DAILY SHORT COLUMNS - Daily Business - |
2005.11.15 |
●怪しい取引データベース化 新システムは、過去の問題取引をデータベースに蓄積することで、似たような取引を早期に発見して被害を防ぐ。例えば、出品の実績がなかった利用者が突然ノートパソコンを大量に出品した場合などは、詐欺につながる可能性が高いパターンとして検知され、この出品者に対してヤフーが利用停止などの措置をとる。 ヤフーはこれまで専門パトロールチームが24時間態勢でオークションに不正行為がないかどうか監視し、不適切な出品があれば経験に基づいて手動で削除してきた。ただ、「実際に被害が発生しないと不正出品かどうかは断定できず、後手後手に回っていた」(同社)という。 異常な取引を検知して被害の拡大を防ぐ仕組みは、クレジットカードではすでに一般的だ。ヤフーは、クレジットカードなどの不正利用対策の専門会社と提携し、新たな取り組みを進める。 ●ルール作り、緊急の課題 市場規模が約1兆円に急拡大したネットオークション市場でのルール作りは、運営者にとって緊急課題だ。 ヤフーが99年に始めたネット競売は04年末には会員数が482万人、年間取扱高5768億円に達し、大手百貨店の売上高並みに成長した。現在月間の平均総出品数は881万件、1日平均の取扱高は16億7千万円。 ただ一方では、ヤフーが、01年以来支払っている詐欺被害者に対する補償金(最高50万円)は05年7〜9月に総額3億6800万円に達し、コスト負担も増加の一途だ。 ネットオークションの参加者の増加率は鈍化しはじめており、さらに市場を拡大するためには運営各社がオークションの安全性を強化する必要にも迫られている。 警察庁によると、05年上半期のネット詐欺の検挙件数は672件で、既に昨年1年間の件数を上回っている。昨年11月には、商品も仕入れ資金もないのにカーナビなどの出品を登録し続け、全国の約1200人から計約1億6700万円をだまし取った事件が摘発されている。 今年7月にはヤフー、楽天、DeNAのネット競売大手3社が不正防止のガイドラインを自主的に定めたほか、10月には日本通信販売協会とネット関連企業が「インターネット通信販売推進協議会」を結成し、不正対策を練ることを決めた。ただ、不正出品者のデータを業界内で共有するなど、犯罪被害が実際に発生しないと対応しきれない手段が中心だった。 ◇ ◇ ◆ネット競売をめぐる最近の犯罪事例 ・他人のIDなどを使い、架空の出品情報を掲載して代金を詐取 ・偽ブランド品を出品して販売 ・殺傷能力のある改造エアガンを販売 ・高級自転車を盗み、部品をばら売り ・盗品のカーナビを出品。仲間が「さくら」となって価格つり上げ 〔朝日新聞〕 ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)米インターネット検索大手のグーグル(Nasdaq:GOOG)は、新刊書籍のオンライン版を1週間”レンタル”するプログラムに対し、消費者がどの程度の関心を示しそうかを探るため、少なくとも1社の出版社に接触した。 この出版社によると、グーグルが検討しているネット書籍はダウンロードや印刷ができない形式をとる。そうした特徴はしばらく先に詰める見込みという。グーグルの構想では、エンドユーザーが支払うレンタル料金は本の定価の10%を想定している。この出版社関係者はそれでは低すぎると考えてはいるものの、出版社がデジタル書籍市場に事業を広げる大きな機会となりうるとみている。 グーグルの構想の具体的な姿はまだ固まっていないもようだが、出版社と協議を行っていることは、グーグルがデジタル書籍レンタルへと計画を進めていることを強く示唆する。 グーグルの広報担当者は、「『グーグル・プリント』は著者や出版社がより多くの書籍をオンライン販売できるよう支援する、新しいアクセスモデルを探っているが、何も発表は予定していない」とコメントした。 「グーグル・プリント・ライブラリー・プロジェクト」は、大学図書館や公立図書館が所有する数百万冊の書物をスキャンし、そのテキストをウェブ検索できるようにするもの。これに対しては、8000人以上の作家が加入する非営利団体「オーサーズ・ギルド」が9月、グーグルを著作権侵害で連邦地裁に提訴するなど、批判が強いものの、それでもグーグルはプロジェクトを続行している。 有料でオンライン書籍を提供するサービスは、複数の企業が最近計画を発表している。米ネット小売り大手のアマゾン・ドット・コム(Nasdaq:AMZN)は今月初旬、書籍の一部または全部について、消費者がネット上での閲覧権を購入する2つのプログラムを来年導入する方針を発表した。独ベルテルスマンの書籍出版部門ランダムハウスも、「ペイ・パー・ページ・ビュー」(閲覧1ページごとの課金)方式によるネット上のコンテンツ提供を計画している。 ウォルト・ディズニー(NYSE:DIS)の書籍部門「ハイペリオン」のロバート・ミラー社長は、新しいレンタルプロジェクトについて、グーグルからまだ打診されておらず、10%のレンタル料金が妥当かどうかは分からないとしたものの、「著者がその著作から報酬を受けられるのであれば、それは歓迎される一歩だ」と述べた。 〔日本経済新聞〕 政府系金融機関改革で撤退論が浮上している国際協力銀行の貿易・海外投資分野で、業務の中核である大口融資先リストが14日明らかになった。朝日新聞が入手した政府の内部資料によると、外国政府を除く融資先(正常債権)の今年3月末の残高で、上位10企業・団体のうち八つを日本の有力企業とその出資会社が占めた。同日の経済財政諮問会議で、同業務の縮小提案にとどめた谷垣財務相に対し、同会議の民間議員は大企業に偏った融資実態を問題視し、撤退を改めて主張した。(編集委員・辻陽明) ●「民間育たぬ」と批判も リストは残高50億円以上の約200団体が金額順に並ぶ。総額は債務保証分を含め5兆円を超える。上位10団体のうち、日本政府が資金を出す国際通貨基金(IMF)と、事業開発資金などを出すブラジル国立経済社会開発銀行を除く8団体が日本の大企業関連だった。同銀の融資先情報は「借り手企業の信用に影響する」との理由でこれまで未公表だった。 8団体の残高は計約1兆3800億円と、リスト掲載分の総額の4分の1を占める。うち日本企業単体は三井物産、三菱商事、全日本空輸の3社で、他の5社は日本企業出資のプロジェクト会社だ。11位以下でもトヨタ自動車のチェコ、フランス、トルコの海外法人が現地工場の費用で計約680億円借りるなど、日本の大企業が並ぶ。 これらの企業では国際協力銀が長期資金の主要な貸手の例も目立つ。今年3月末では、三菱商事、三井物産でともに同銀が明治安田生命保険に次ぐ2番手の貸手。全日空でも首位の日本政策投資銀行に次ぐ規模だ。川崎重工業でも首位の121億円で、2位の三井住友銀行の69億円を引き離している。「航空機を海外企業と共同開発する資金」と担当者は説明する。 融資は個別の案件ごとに行われ、民間金融機関がまねできない長期、低利など有利な条件が企業を引き寄せる。プロジェクトだと「国際協力銀の融資が呼び水になり、民間融資も集まる」(大手商社)効果もある。 同銀は「日本企業の競争力を強め、外国政府と交渉しやすくする」と役割を強調するが、プロジェクト融資では、親会社に債務保証させリスクを抑える例も少なくない。 谷垣財務相は同日の諮問会議に(1)円借款(2)通貨危機対応(3)資源確保・国際競争力確保に不可欠な金融、の3分野を残し、それ以外の分野からは原則撤退する国際協力銀の改革案を示した。ただ、残す分野として挙げた「資源確保・国際競争力確保」は範囲があいまいで、現状の融資先上位の大半が該当するとの指摘もある。規模縮小の効果は不透明だ。 政府関係者からは「このような実態では、民間の金融機関が育たない。政府の信用が必要なら、航空機の購入資金のような債務保証に切り替えるべきだ」との指摘もある。その一方、日本貿易会などは現在の機能存続を主張しており、この日の諮問会議でも「大きな海外プロジェクトは国際協力銀にやってもらわないと円滑に進まない」との擁護論が出た。 ◇ ◇ ◆キーワード <国際協力銀行> 99年に旧日本輸出入銀行と旧海外経済協力基金が統合して発足。旧輸銀の貿易・投資関係を扱う国際金融業務は、融資残高が今年3月末で約8兆5千億円、保証が約9千億円。旧基金の途上国援助を担う海外経済協力業務の円借款が11兆円余り。 〔朝日新聞〕
|