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2004.09.30
■ニートと呼ばれる若者たち−−玄田有史・東大助教授が調査

 ◇フリーターにも失業者にもなれない−−東大社会科学研究所・玄田有史助教授が調査

 今、「ニート(NEET)」と呼ばれる若者が増えている。仕事もせず、学校にも行かず、職業訓練も受けていない若者のことだ。どんな若者たちなのか。早くから彼らに注目してきた玄田有史(げんだゆうじ)・東大社会科学研究所助教授(39)とともに考えた。【小国綾子】

 ■■白書で「52万人」

 「ニート」とは、英語の「Notin Employment, Education or Training」の頭文字である。フリーターは少なくともパートやアルバイトという形態で仕事をしている人を指し、「失業者」は統計上、職探しをしている者を指す。「だから無職で、かつ仕事を探そうともしていないニートは、『フリーター』にも『失業者』にもなれない存在なのです」と玄田さんは説明する。

 そもそも「ニート」という言葉は英国で生まれた。1999年に英国の内閣府が「16〜18歳の青年に限っても人口比9%、数にして16・1万人が毎年ニートになっている」という報告書を発表し、一気に社会問題化した。

 では、日本にいったいどのくらいいるのか。厚生労働省は今年の「労働経済白書」の中でこの層に初めて言及。「非労働力人口のうち、15歳以上35歳未満、卒業者、未婚で、家事・通学をしていない者」を「若年無業者」と定義し、労働力調査から「03年で52万人に上る」と推計した。前年は48万人だから、1年で4万人増えた計算だ。

 一方、玄田さんは03年1〜3月までの労働力調査をもとに、25歳未満の若者について独自に推計している。失業者と就業者を除いた「非労働力」の853万人から就業希望者129万人と就業内定者91万人、学校に在学する579万人と浪人生14万人(文部科学省の学校基本調査)を除く残りの40万人が「ニート」というわけだ。「25歳未満だけでも40万人。厚労省の推計より現実は深刻です」と玄田さんは説明する。

 ■■「自分をつかめない」

 白書からはなかなか「ニート」の人物像が浮かび上がってこない。玄田さんとの共著「ニート フリーターでもなく失業者でもなく」(幻冬舎)で若者たちのインタビューを担当した曲沼美恵(まがぬまみえ)さんはこう説明する。「本当にいろいろな人がいます。就職のきっかけを逸したまま立ちすくんでいる人もいれば、不登校やひきこもりの後、社会に出ることに不安を感じる人もいる。フリーターとの違いについても、簡単には線引きできません。例えば『フリーター』と自己紹介する人の中にも、もう何年間もアルバイトをしたことがなく、就職活動もしていないニートと呼べる人たちはいます。『自分をつかめない』という悩みも感じました。就職活動をする前に、自分は何をしたいのか、何に向いているのか、まじめに答えを探してしまう。一人で考え込むうち、一歩が踏み出せなくなってしまう。誰より『就職しなければ』と思っている人たちなのかもしれません」

 ◇訴える「生きづらさ」

 厚労省は03年、「若年者のキャリア支援にかかわる調査研究」という調査を行った。18歳以上35歳未満で無職の人を対象に、なぜ仕事に就かないかなどをインターネットを通じて調べたのだ。

 玄田さんはこの調査対象となった無職の若者を、求職活動中の「失業者」と求職活動をしていない「ニート」に分類し、分析した。最終学歴は、中学卒と高校中退の合計が「失業者」では5・3%なのに比べ、「ニート」では21%にも跳ね上がる。収入源(複数回答)は「ニート」の実に70・1%が「家族や親族の収入」を挙げる一方、「失業者」では49・7%にとどまり、その代わり18・9%が「雇用保険」を挙げた。

 さらに「ニート」の約4割は過去に一度も求職活動をしていない。求職活動をしなかった理由のトップは「人付き合いなど会社生活をうまくやっていける自信がないから」で43・1%。「自分の能力・適性に合った仕事がわからないから」(29・2%)、「自分の能力・適性がわからないから」(27・7%)、「なんとなく」(24・6%)と続く。一番の原因は「人間関係」なのだ。

 「彼らは『働かない』のではない。『働けない』のです。職場での人間関係を極度に恐れ、自分は働けないと思いこんでいる。不況など時代背景や教育、家庭などの要因が複雑に入り組んでいるのでしょうが、多くのニートたちが口にするのは『生きづらさ』です。これは今の若者全般の特徴にも重なっており、誰もが『ニート』になりうるともいえます」と玄田さんは強調する。

 ■■厚労省も危機感

 厚労省にとって若年対策は重要施策の一つだ。これまで就労意欲はあるがミスマッチのため仕事に就かない若者をターゲットにさまざまな対策を講じてきた。「しかし今後は就労意欲自体がない若者たちに向けて施策する必要がある」(同省職業能力開発局)と危機感を強め、今後は合宿形式の労働体験なども計画している。

 玄田さんは「国の対応は予想以上に早かった」と評価する一方で、予防の必要性も説く。「高校生ではもう遅い。14歳で始めなければ。現在多くの中学校が行っているような1日だけの職場体験では意味がない。兵庫県と富山県ではすべての公立中学校で5日間の職業体験を設けている。仕事の現実にふれ、社会の中で生きていく対応力が自分の中にもちゃんとあることを実感させてやることが大切なのです。この実感が決定的に欠けているから、『働けない』と思いこんでしまうのです」

 「働かない」のではなく「働けない」若者たち。大人の目には「甘い」と映るかもしれない彼らもまた、実は自分の現状に苦しんでいるのかもしれない。

 ■人物略歴

 ◇玄田有史氏(げんだ・ゆうじ)

 1964年、島根県生まれ。東大経済学部卒。02年から現職。若者の雇用問題に新しい視点で切り込んだ「仕事のなかの曖昧(あいまい)な不安」で第24回サントリー学芸賞。近著に「ジョブ・クリエイション」(日本経済新聞社)。

〔毎日新聞〕


2004.09.27

■脳死状態の15歳未満、4分の1が心停止まで1カ月以上


 脳死状態になった15歳未満の小児について、厚生省(00年当時)研究班の判定基準に沿って脳死と診断後も、心停止まで30日以上かかった「長期脳死」の患者が99年以後に少なくとも4人いた。日本小児科学会の全国調査でわかった。主治医が臨床的に脳死状態だと診断した例も含めると、脳死状態の小児の4分の1が長期脳死になっている実態も明らかになった。

 調査は、現在の臓器移植法下では認められていない15歳未満の脳死臓器提供に向けたもの。全国の救命救急センターや研修指定病院、計637施設を対象に実施。脳死診断を経験した75病院のうち、回答があった36施設、計74例の「脳死」症例を調べた。

 基準に沿って診断を実施していたのは、13例。このうち4例は、診断後も人工呼吸器をつけて4〜10カ月の間、心臓が動いていた。回復した例はなかった。

 主治医が「脳死」と判断した例も加えると、18例が長期脳死で、ほとんどが6歳未満だった。心臓が動いていたのは半年未満が10例、1年未満が7例、2年が1例だった。また現在、2人が人工呼吸器をつけたままの状態だという。

〔朝日新聞〕


2004.09.26

皇太子さま、おひとりの登山Vol.2

そんなこんなにあれこれぼんやりと想いを巡らせているうちに、遠い昔昭和天皇がご健在で皇太子様がまだ浩宮様でいらっしゃった頃にお茶をご一緒した記憶が蘇ってきました。

私はちょうど皇太子様と同学年にあたるのですが、当時学習院大学に通う音楽仲間の一時的な応援で、コンサートに向けての練習のために彼が所属していた音楽サークルに通っていた時のことでした。

練習の合間にキャンパス内の学食で食事を済ませてお茶をしていたところに、ちょうど皇太子様がおいでになったのです。私の音楽仲間は、皇太子様と同級生として親しくしているらしく、彼に気付いた皇太子様の方から私達と同じテーブルにお座りになったのです。

私も彼に皇太子様に紹介をされ、それからしばらく談笑させていただいたのですが、周囲に男女5〜6名でしたか(記憶が曖昧ですが10名はいなかったように思います)黒いスーツの男女のSPが付かず離れず取り囲むように護衛をしていますし、普段は私よりもずっと口汚い口調の音楽仲間の彼が、妙に上品な口調で会話する違和感で落ち着かず、どんな会話をしたのかもあまり覚えてはいません。

ただ皇太子様のお顔の肌艶がよく、しきりに頷いていらっしゃった柔らかそうな白い頬が印象に強く残っています。

常時ボディーガードに囲まれ、お車でご通学されていたのですが、前後を2台づつ黒塗りの5台の車が連なる様は私には充分に異様に感じましたが、音楽仲間も含めてキャンパス内の学生達には日常の慣れた光景なのでしょうか、誰も驚かなければ皇太子様とも皆が親しげに自然な会話を交わしている様子でした。(続く)


2004.09.25

皇太子さま、おひとりの登山

 皇太子さまは16日、東京都奥多摩町の鷹ノ巣山(1737メートル)に登られた。皇太子さまの登山は、2002年9月に雅子さまと山梨県の大菩薩嶺に登られて以来。

 約7時間かけて登山道を歩いた皇太子さまは、奥多摩の山々が連なる雄大な景色に何度もカメラを向けるなど、2年ぶりの登山を満喫された様子だった。

〔朝日新聞〕


翌日の新聞にこんな記事が掲載されたその当日、たまたま所用で私は青梅にいたのです。

何故か沿道の至るところに大勢の地元の人々が出ているばかりでなく、これまた大勢の警官達も警備にあたっているような物々しい雰囲気に驚いて尋ねてみれば、皇太子様がじきにその道を通ってお帰りになるので、一目お姿をという人々の集団なのだとか・・・。

その人々の数の多さやどのようにその情報がこれだけ広く知れ渡るのであろうかなどと、呆れ半分とても驚いてしまったのですが、さらに聞き及ぶに皇太子様がお帰りになるその道の全信号に一人ずつ警官が立ち、信号を強制的に切り替えて、皇太子様のお車をノンストップでお通しするのだとのこと、一体ご帰路にどれだけの信号があって、その数だけの警官が動員されるのかと想像しただけで、溜め息すらも胸に詰まってしまう心持ちになってしまいました。

皇太子様がお帰りになった後で、お姿が拝見できたという人達が興奮して、車窓からお手振りをいただいたと大喜びする様子に、私は大きな違和感を感じてしまいました。

奥多摩の人々だけでなく、どこへお出かけになるにつけ、地元の人々の熱烈な歓迎ぶりは日頃テレビでも時折目にしますが、私自身には沿道でお待ちして、お姿を拝見できるかに一喜一憂できる感覚は皆無ですし、信号を切り替えることにあれだけ膨大な数の警察官を動員してしまうことが当然とされる現実、また皇太子様ご本人とて登山でお疲れでしょうに、ご帰路の間中沿道の人々にお手振りを続けられるのであろうかと、すべてのこうした一連の現実に奇異を感じてしまうのでした。(続く)


2004.09.24

■イラクの拉致、賛成一時94% アルジャジーラ調査


 【カイロ=吉岡一】カタールのアラビア語衛星放送局アルジャジーラが、人気の討論番組の中でイラクで相次ぐ拉致事件への賛否を視聴者に尋ねたところ、電話による回答では「賛成」が94%に達した。インターネットでの調査を合わせれば、最終的に7割前後に落ち着く見通しだ。民間人を人質に取り、首を切断する残虐さに、被害者を出した各国では反発が広がっている。だが、アラブ世界では「米国がイラク人殺害を続ける以上、当然の反撃」とする考え方への支持が根強いことを示している。

●「米に抵抗」アラブ系支持

 調査は21日、討論番組「反対意見」の放映中に行われた。同番組では政治、社会問題について、考え方の対立する論者が85分間にわたって激論を交わす。

 質問は「イラク人は占領に抵抗するため、人質を拉致する権利を持つか」。同局によると、放映中に電話で531件の回答(アラビア語)が寄せられ、賛成が94%を占めた。大半が中東諸国だが、英、スウェーデン、スペイン、ハンガリー、オーストラリアに在住するアラブ系の人々からも回答があったという。

 番組の論者は、イラクの旧フセイン政権に対する反体制活動家だったカリーム・バドル氏と、政治雑誌編集者でエジプト人のタラート・ルメイハイ氏だった。

 バドル氏は「あらゆる拉致は認められない」と主張。それに対し、ルメイハイ氏は「人間として人質の殺害や首の切断には賛成できない」としながらも、「米軍は一方的に多数の無実のイラク人を殺害している。拉致もひとつの抵抗方法としてやむをえない」「拉致グループは、米軍協力者とそうでない者とを区別しており、米軍に関係ない市民は解放している」と反論した。番組の中で賛成94%の結果について感想を聞かれたバドル氏は、戸惑った表情を見せたまま答えなかった。

●ネット回答 「女性殺害」で反対増

 一方、同局は番組の放映中から23日夜(日本時間24日未明)までインターネットでの回答(アラビア語)を受け付けている。

 同局によると、ネットでの回答に限れば、23日昼現在で総数約4500に対し、賛成が65%前後。23日朝、イラクの子供を支援する人道援助団体のイタリア人女性2人の殺害情報が流れたのを境に、反対が急に増えているという。

 イスラム教で民間人女性の殺害が禁じられ、アラブメディアが強い非難を交えて報道していることも影響しているらしい。

 同局は、電話と合わせた最終的な拉致「賛成」は、7割程度にまで減るとみている。

 アルジャジーラは、中東全体で約3500万人、全世界で約4千万人以上が視聴しているとされている。

〔朝日新聞〕


2004.09.12

中3の7割「親と同じ仕事いや」…理由はつまらなそう

 中学3年生の約7割が、「親と同じ仕事に就きたくない」と考えていることが、お茶の水女子大の耳塚寛明教授らの研究グループの調査で分かった。

 東北大で11日開かれた日本教育社会学会で発表された。“拒否反応”は小学生より強く、親の仕事を知らない生徒も見受けられた。

 調査は昨年秋、関東地方のある市で、公立の小学校3年生、同6年生、中学3年生の計約3300人を対象に行われ、「将来、父親や母親と同じ仕事をしたいか」「どんな仕事がしたいか」などを聞いた。

 この結果、中3では72%が「父親と同じ仕事に就きたくない」と回答。母親の仕事についても、64%が否定的にとらえた。小3は60%と50%で、学年が上がると数値が高くなった。

 理由は「つまらなそう」「夜遅く帰ってくるから」などがトップ。「自分の道を行きたい」「ほかにやりたいことがある」などがこれに続いた。

 父親の仕事を「分からない」「知らない」と答えたのは中3で5%。母親の仕事も3%が内容を知らなかった。

 一方、就きたい仕事は、小3で「スポーツ選手」や「パンや菓子の製造作業者」など身近な職業が上位。中3は「保育士」「教師」「デザイナー」などが人気で、「リストラなどでクビにならないから公務員」といった現実的な声もあった。

 中3では「未定・何もしたくない」も7%に上り、進学校や高校の専門学科を希望する生徒に比べ、一般的な「普通科高校」を希望する生徒にこの傾向が強かった。

 学校現場では近年、子どもたちの職業意識を高めるキャリア教育が注目されており、同グループは「今回の調査結果を踏まえ、どのような職業教育が有効か模索したい」と話している。


2004.09.10

■「9・11」3年、今も終わらぬ身元確認

 【ニューヨーク=河野博子】米同時テロから丸3年がたち、また「9月11日」が巡ってくる。ハイジャック機突入で崩壊した世界貿易センタービルからの遺体確認作業は、今も続いている。悲劇の終わりは、まだ来ない。

 一人息子の白鳥敦さん(当時36歳、債券取引仲介カンター・フィッツジェラルド勤務)を世界貿易センターで亡くした父、晴弘さん(63)は今月1日、ニューヨーク・マンハッタンにある市検視局を訪れた。

 「市検視局から頭がい骨と上腕部の骨が発見されたと知らせがありました」。7月22日付のニューヨーク総領事館からの手紙を信じられない思いで読み、渡米。葬儀所で荼毘(だび)に付してもらった後、手のひら1杯分のキラキラ光るビーズのような遺灰をビニールの袋に入れてもらった。

 敦さんの遺体は、2001年12月にも発見されている。この時は、大腿(だいたい)部の一部、と言われた。「今回、頭の骨という大事な部分を見つけてもらって……。日本に連れて帰って、ゆっくり休ませてあげたい」と白鳥さんは感無量だ。

 白鳥さんは、敦さんの蓄えをもとに、また米政府からの補償の受け皿として、「911NY夢に向かって基金」を作った。

 昨年3月と今年2月の2回、アフガニスタンを訪問。ウサマ・ビンラーディン率いる国際テロ組織アル・カーイダがタリバン政権時代に拠点としていた国だ。そこで、鼻水をたらし、真っ黒になってボロボロの服を着た子供たちを見た。東京大空襲の後の焼け野原や、疎開先でろくに手当ても受けられずに父が病死したころの風景が脳裏をよぎった。現在、カブールで浄水設備や教育施設などの建設を計画している。

 白鳥さんは、市検視局で、冷凍保存用コンテナがずらりと並ぶのを見た。発見された部分遺体は1万9915体。この53%に当たる1万602体は、まだ身元が確認されておらず、スタッフ20人により、DNA鑑定が進められている。白鳥さんは「敦の頭の骨が帰ってきたように、何年かかっても、その膨大な量の遺体も、必ず家族のもとに帰れるんだ、となんだか安心しました」と話した。

 市検視局発表の犠牲者数は、現在2749人。遺体や身につけていた品物などから身元確認されたのは1568人で、残りは家族からの申し立てでニューヨーク州地裁が死亡宣告を行っている。

 テロ後、ツインタワー跡地(通称「グラウンド・ゼロ」)のがれき180万トンがマンハッタン島南西約6キロ・メートルのスタッテン島にあるごみ埋め立て地フレッシュ・キルズに運び込まれ、ここで、遺体や遺品を選別する作業が、2002年7月まで続けられた。

 政府補償基金は、対象者2976人のうち、約97%に当たる2880人が申請し、ほとんどの人がすでに支給されている。補償を受けるには、航空会社に対する訴訟を起こす権利を放棄しなければならないため、計96人が申請を断念。69人がすでに、航空会社を相手取った訴訟を起こしている。

 11日当日の追悼式典では、ツインタワーそれぞれのハイジャック機突入の瞬間、崩落の瞬間の計4回にわたって、黙とうが行われる。犠牲者の名前全員を、希望者から抽選で選ばれた祖父母、父母らが読み上げる予定だ。

〔読売新聞〕


2004.09.07


■老いゆくマンション:
/上 孤独死を防ぐ

 老朽化したマンションが増え続けている。築30年を超えるマンションは全国で約44万戸と推計されている。それに伴ってマンションで暮らす人たちも高齢化し、課題が生まれている。どのマンションでもいずれ直面する問題を3回に分け、紹介する。1回目は「孤独死」を取り上げた。【樽味典明、写真も】

 ◇10戸で階段委員会−−新聞販売店と通報協定

 千葉県松戸市。約5400戸が暮らす常盤平団地で01年春、1人暮らしの男性が白骨死体で発見された。死後3年が経過していた。

 家賃や光熱費は預金口座からの引き落とし。残高不足となり、都市基盤整備公団(現・都市再生機構)が家賃の督促状を出しても応答がないため、職員が訪れ見つけた。翌年にも1人暮らしの男性が死後4カ月たって見つかった。

 ■進む高齢化

 同団地は5階建て前後の中層建物を中心に、一戸建て住宅などが広がる。1960年の建設から半世紀近くがたち、住民の高齢化が進み、1人暮らしの老人も増えた。2人の孤独死をきっかけに住民らは議論を重ね、孤独死への対策を打ち出した。

 自治会は新聞販売店3店と協定を結び、配達の時に何かおかしいと感じたら、すぐ通報する▽カギ専門店と提携して、いざという時には昼夜を問わずすぐ現場に来てもらう▽隣人の様子を気にかけ、おかしいと思ったらすぐ通報するとの申し合わせ−−などを決めた。

 今年に入り80歳の女性ら4人が孤独死したが「近隣からの通報が増え、孤独死の場合でも4日以内に発見できている」と団地の自治会長、中沢卓実さん(70)は話す。今年6月には地区社会福祉協議会が事故や火災などに対応するため、緊急時の連絡先やかかりつけの医師らを記入する「あんしん登録カード」も始めた。

 ■支え合う

 しかし、こうした孤独死の防止には、隣近所の人たちの相互の気遣いが必要だが、プライバシーを重視したいと考える人も多く、なかなか難しいのが現状だ。

 同じ松戸市内にある都市再生機構の小金原6丁目7番住宅は小規模単位の隣組を作って成功している。18棟に420戸、約1200人が暮らす。その3人に1人が、60歳を上回る。

 18棟はいずれも5階建てで一つの階段を10戸が利用する。この10戸を一つの単位とする階段委員会を作り、代表者を1人置いた。集会所が狭かったこともあって自然発生的にできた組織だった。

 問題があるとまず、それぞれの階段委員会で意見をまとめ、代表者が代表者会議に臨む。代表者は1年交代の持ち回り。

 ■設備面でも

 回覧板を回すのも草取りも階段委員会の単位で動く。住民が顔を合わせる機会が多く、相互によく知る間柄。「誰が独居だとか、家族はどこにいるとか誰かが知っている」と自治活動委員長の木村正男さん(77)。自然に互いに気にかけ合う意識が芽生え、これまで孤独死はないという。

 千葉県マンション管理士会事務局長の山田明さんは「隣人を把握できるという意味で階段委員会は効果的でしょう。外廊下のあるマンションなら同じ階ごとに取り組むのがいい」と話す。さらに「部屋にセンサーをつけて独居老人の動きを検知し、異常があれば知らせる方法などハード面での取り組みも考えた方がいい」とアドバイスする。

 ●1人暮らしの高齢者

 総務省統計局によると、65歳以上の1人暮らし(2000年10月現在)は全国で303万2140人(男74万1647人、女229万493人)。前回調査(1995年)に比べ、82万9980人、37.7%と大幅に増加している。

〔毎日新聞〕