DAILY SHORT COLUMNS - Daily Life -

 
2006.09.30
■向井さん夫妻の双子代理出産、出生届認める…東京高裁

 タレントの向井亜紀さん(41)と夫で元プロレスラーの高田延彦さん(44)が、米国の女性に代理出産を依頼して生まれた双子(2)について、東京都品川区が出生届を不受理とした問題で、東京高裁(南敏文裁判長)は29日、出生届を受理するよう、品川区長に命じる決定をした。

 法務省は「出産した女性を母とする法解釈に反する」として、代理出産で生まれた子供の出生届を受理しない姿勢をとっており、今回の判断は大きな議論を呼びそうだ。

 向井さんの代理人などによると、向井さんは2000年秋、子宮がんにかかっていることがわかり、子宮を摘出する手術を受けた。02年8月、本人の卵子による受精卵を、第三者の女性の子宮に移植して出産してもらう代理出産を行うことを表明。その後、3度目の体外受精で30歳代の米国人の代理母が妊娠し、03年11月下旬、この代理母が男の双子を出産した。

 向井さん夫婦は品川区に出生届を提出したが、04年1月、同区は不受理。このため、向井さんは不受理を取り消すよう品川区長に求める家事審判を東京家裁に申し立てた。昨年11月、同家裁が却下したため、東京高裁に即時抗告していた。

 東京高裁は決定で、「わが国の民法は、生殖補助医療技術が存在しなかった時代に制定されたが、現在はこうした技術で人為的な操作による妊娠や出産が可能になっている」と指摘。「法制定時に想定されていなかったからといって、人為的な操作による出生が、わが国の法秩序の中に受け入れられない理由とはならない」と判断した。

 その上で、向井さんのケースについて「(向井さん夫婦が)法律的な親として養育することが、子供の福祉に最もかなっている」と述べた。

 向井さん夫婦の2人の子供は米国籍のパスポートを持ち、保護者が日本人という在留資格で暮らしている。日本で出生届が受理されないままだと、法律上の親が存在せず、相続権などが認められない。

 東京高裁決定について、品川区は「決定文を入手しておらず、事実関係を確認できていないため、コメントできない」としている。

 代理出産を巡っては、関西地方在住の日本人夫婦が、出生届の不受理を取り消すよう家事審判で求め、昨年11月、最高裁が不受理を正当と認める決定をして、確定したケースがある。

 この夫婦は、夫の精子を凍結保存し、アジア系米国人女性から提供を受けた卵子を使って体外受精。受精卵は別の米国人女性の子宮に移され、双子が生まれた。精子、卵子とも夫婦のものだった向井さんのケースとは異なっている。

〔読売新聞〕


2006.09.27

■独り暮らしの半数「誰にもあいさつせず」・賃貸住宅へ引っ越し時に

 不動産情報サイト「ホームズ」を運営するネクスト(東京・中央)は「賃貸住宅のご近所づきあい実態調査」をまとめた。引っ越した際、1人暮らしの住人の半数が隣人にあいさつをしていないという。近所付き合いをしない割合も4割を超え、都市部で1人暮らし世帯が孤立している現状が浮かび上がった。

 引っ越し時に誰にあいさつをしたかを複数回答で聞いたところ、「あいさつしていない」が51.9%、「大家」が37.9%、「隣の部屋の住人」が19.3%だった。近所との付き合い方では、「顔を合わせたらあいさつ」が51.7%、「付き合っていない」が43.1%。

[日経産業新聞]


2006.09.25

■金融資産1億円超の富裕層、86万世帯 計213兆円

 預貯金や株式などの純金融資産を1億円以上保有する「金持ち世帯」が05年時点で86万5000世帯、資産総額213兆円になったことが野村総合研究所の調べでわかった。世帯数は全世帯の2%にも満たないが、純金融資産のシェアは18.4%(00年比2%幅アップ)を占めた。景気回復による株高効果もあって、小泉政権の下で「持てる層」への資産の集中がじわりと進んだようだ。

 「純金融資産」は、預貯金や株、投資信託、債券、年金保険などの金融資産の総額から負債を差し引いたもの。日本全体では1153兆円と、00年に比べ112兆円増えた。遺産相続の増加や株式市場の好況の効果があったと見られる。

 純資産5億円以上の「超富裕層」は5万2000世帯で総額46兆円、1億円以上5億円未満の「富裕層」は81万3000世帯で総額167兆円だった。最近は新規株式公開やストックオプション(株式購入権)の行使で一気に「金持ち」になるケースも多い。07年からは「団塊の世代」が大量に退職金を得るため、さらに増加が見込まれている。

 一方、純資産3000万円未満の「マス層」は3831万5000世帯で総額512兆円となり、資産全体に占める比率は44.4%と5年間で3.9%幅ダウンした。

 調査結果は、各種統計やアンケートなどを基に野村総研が推計した。

〔朝日新聞〕


2006.09.18

■死刑廃止から25年の仏、42%が復活望む

 18日に死刑廃止から25周年を迎えたフランスで、国民の42%が死刑復活を望んでいることが世論調査機関TNSソフレスの調査(13〜14日実施)で分かった。復活反対は52%。AFP通信が報じた。

 右派政党の支持者ほど復活論が強く、国民戦線支持層は89%が復活に賛成、与党・民衆運動連合(UMP)でも60%が賛成。これに対し社会党支持層では賛成が30%にとどまった。若いほど、また高学歴になるほど復活反対の傾向が強い。

 フランスでは、81年に就任したミッテラン大統領(社会党)が死刑廃止を提案、国民議会は4分の3の圧倒的支持で廃止が決まった。同じソフレスの当時の調査によると、国民の62%は死刑廃止に反対していた。

〔朝日新聞〕


■65歳以上、人口の20.7% 昨年より83万人増

 「敬老の日」にちなんで総務省が推計した15日現在の65歳以上の人口は2640万人で、総人口(1億2772万人)の20.7%に達したことがわかった。昨年より83万人増え、人口、比率ともに過去最高を更新した。

 このうち男性は1120万人(男性人口の18.0%)、女性は1520万人(女性人口の23.2%)。

 また、「後期高齢者」といわれる75歳以上の人口は1208万人で、総人口の9.5%に達した。00年以来、50万人前後のペースで増え続けており、総人口の1割に近づいている。

 05年の労働力調査によると、65歳以上の高齢者で働いている人は495万人で就業率は19.4%だった。米国の14.5%、イギリスの6.3%などを上回り、欧米諸国より高い水準にある。

〔朝日新聞〕


■年金調査:「近い将来破たん」59%に 40代不信感強い

 毎日新聞が実施した全国世論調査(面接方式、今月1〜3日)で、国の年金制度について聞いたところ、「近い将来破たんすると思う」と答えた人が59%に上った。年代別では、既に年金を受け取っている70代以上は37%と比較的少なかったが、40代は77%に達し、現役世代が公的年金に強い不信感を抱いている実態を裏付けた。「破たんするとは思わない」と回答したのは、全体の39%だった。

 年金制度を維持する方策については、「給付水準をカットし、現役世代の負担は増やさない」が40%で最多。ただ年代別にみると、20、30代は47%だったのに対し、60代は32%、70代以上も34%で、世代間の違いが浮き彫りとなった。「現役世代の負担を引き上げ、給付水準を維持する」(全体で27%)は、70代以上が34%だった半面、20、30代はそれぞれ24%、21%だった。

 一方、公的年金にどの程度頼りたいかとの問いには、38%が「公的年金を中心に、貯蓄や民間保険で補う」と答え、「全面的に頼りたい」も36%だった。40代も52%が「公的年金中心」で、不信を持ちながらも公的年金に頼らざるを得ない厳しい現実をうかがわせた。

 消費税を社会保障目的税化して引き上げ、年金財源に回すことの是非は、「反対」が53%で「賛成」の43%を上回った。男性は賛成が50%だったのに対し、女性は37%。年代別では、60代の52%、70代以上の50%が「賛成」と答えたが、他方、若い世代ほど反対が増え、20代の「賛成」は32%にとどまった。支持政党別では、自民支持層は53%が賛成したが、公明党は45%と与党内での温度差も表れた。【吉田啓志】

〔朝日新聞〕

 


2006.09.17

■校内暴力:公立小、初めて2000件突破 05年度

小学校の校内暴力 公立小学校の児童が05年度に起こした校内暴力は2018件(前年度比6.8%増)で3年連続で増加し、過去最多となったことが、文部科学省の「生徒指導上の諸問題の現状」の調査で分かった。このうち、児童が言動を注意され逆上して足をけるなど、教師への暴力は過去最多の464件で、前年度比38.1%増と急増ぶりが目立った。

 05年度の小中高生全体の校内暴力件数は3万283件(0.86%増)で、そのうち中学生は2万3115件(0.02%増)、高校生は5150件(2.5%増)。

 増加の目立つ小学生の校内暴力のうち、最も多いのは児童間暴力の951件(4.1%減)で、他に器物損壊の582件(7.0%増)など。校内暴力で11人が警察に補導された(学校外15人を含めると計26人)。

 また、小5の男児1人が器物損壊で10日間の出席停止となった。問題行動を繰り返す児童生徒がいる場合、他の子どもの学習権を保障するため市町村教委が保護者に命じる制度で、出席停止の用件を明確化するなど適用しやすくした学校教育法改正(02年1月施行)以来、小学生では初めて。

 同省は教師への暴力の増加傾向について、「259人で464件と、中高生に比べて1人の児童が暴力を繰り返すのが特徴。しかられた後に気持ちの切り替えができなかったり、注意を聞けないケースもある」と分析。「保護者の協力不足や担任任せな実態もある」と保護者との連携や校内での一致した対応を求めている。【長尾真輔】

〔毎日新聞〕


■校内暴力:深刻な対教師暴力の実態浮き彫りに…現状探る

 「こら、くそばばあ。あっち行け」。小学生が教師に暴言を吐いて殴る、ける。13日に発表された文部科学省の調査で、深刻な対教師暴力の実態が改めて浮き彫りになった。一人の児童の暴力が、クラスに荒れた雰囲気をつくり出し、学級崩壊の連鎖を生む。家庭に指導力はなく、暴力の対象になった教師は休職に追い込まれる。暴力でしか自分を表現できなくなった子どもたち。その現状を探った。【高山純二、吉永磨美】

 給食の時間。小3の男児が壁や友達の机、テレビの台をガンガンとけって回る。周りの児童がはやしたて、男児の勢いは止まらない。教室の後ろでは、別の児童たちがパンをちぎって、ごみ箱に投げ入れる「遊び」に夢中だ。歩きながら給食を食べている児童もいる。

 兵庫県内の小学校に勤務する40代の女性教諭は03年10月、学級崩壊したクラスの「応援」に入り、モノをけ散らす男児を廊下に引きずり出した。「何かをけらないと収まらないなら、私をけりなさい」。男児はためらわなかった。手加減もせず、女性教諭のおなかや足を20発以上もけり続ける。担任は別の児童を指導しており、暴行に気がつかない。女性教諭にとっては、児童から受けた初めての暴力を、隣のクラスの男性教諭が助けに来るまで耐え続けた。

 3年生は2クラス。04年のクラス替えで、2クラスとも学級崩壊に陥り、さらに05年は下の学年にも「崩壊」が波及した。「指導を聞かない子どもと何度取っ組み合いをしてきたか。みんな(ほかの教師)もやられていた」。保護者会には、荒れている児童の保護者に限って欠席する。家庭での指導はもはや期待できなかった。今年度、女性教諭は耐え切れなくなって休職した。

 「すれ違いざま、何もしていないのに『くそばばあ』と言われて……。今も小学生の登下校を見ると、心臓がどきどきする。このまま退職するかも……」

  ◇  ◇  ◇

 教師の名前を呼び捨てにして、「死ね、死ね、死ね」と何度も繰り返す。埼玉県内の50代の女性教諭は、ほんの些細(ささい)な指導をしただけで、まるで幼児がじだんだを踏んでいるような小2男児の様子に戸惑った。教諭自身はまだ暴力を振るわれたことはない。しかし、暴言や児童間暴力は、実感として年々低年齢化が進んでいる。

 中国地方の小5男児が授業妨害などの問題行動を繰り返して10日間の出席停止処分を受けるなど、「厳罰化」や「警察との連携強化」を模索する動きが進んでいる。だが、女性教諭は「今の教師は、『子どもと向き合う』こと以外の負担(学校内の事務作業など)が大きくなっている。もっと子どもと向き合う時間と余裕がほしい」と漏らした。

 ◇毅然と語りかけを 

 森嶋昭伸・国立教育政策研究所生徒指導研究センター総括研究官の話 少子化、情報化の影響で、子どもたちは感情をぶつけ合い、対処することが苦手になっている。まずは「ゼロトレランス」(寛容度ゼロ指導)のように、当たり前の常識やマナーを子どもや保護者に毅然(きぜん)と語りかけていくことが大切だ。さらに、警察・地域との連携も必要になるだろう。

 ◇成果主義でひずみ 

 葉養正明・東京学芸大教授の話 個性重視の半面、競争主義や成果主義が教育現場にも持ち込まれ、そのひずみが子どものストレスとなり、暴力や学級崩壊となって表れ、さらに校内暴力という形で問題が噴き出している。対症療法では解決しない。社会構造のレベルでの問題解決が求められている。

〔毎日新聞〕


2006.09.11

■カーシェアリング、都市部に広がる 環境に優しく経済的

 「カーシェアリング」が東京、横浜など都市部を中心に広がっている。あらかじめ登録した会員たちが車を共同利用する仕組みで、行政の後押しに加えて駐車場の確保の難しさ、燃料の高騰もあり、「マイカーより安い」と会員が増えている。カーシェアリングを売りものにするマンションも出てきた。

 東急東横線大倉山駅(横浜市港北区)そばで8月4日に開かれた試乗体験会。車の予約から返却までを担当者が説明し、「レンタカーと違い、借りるたびにいちいち面倒な書類のやりとりをすることもありません」と説明した。

 登録料9800円、ICカード発行手数料1480円のほか、月会費1980〜3980円で事故の際は保険も適用される。車の利用料は15分につき140〜240円。一方で駐車場、燃料、保険代がいらず、車を共有することで排ガスなどの環境負荷も減る。

 事業を手がけるシーイーブイシェアリング(CEV)社(東京都港区)の高山光正さんは「車に乗るのが年間1万キロ以内なら自家用車より得です」と話し、需要はさらに増えるとみている。

 狙いは買い物や子供の送迎など近場の利用が多い主婦層だ。大倉山の試乗体験会を子供2人と訪れた近所の主婦(46)は「車を買うことも考えましたが、駐車場代も高いので」と入会した。

 CEV社は「ステーション」と呼ぶ駐車拠点を28カ所で展開、02年4月に53人だった会員は700人にまで増えた。

 昨秋から入居が始まった目黒区の分譲マンション「サンクタス目黒大塚山」には、2台の軽乗用車がカーシェアリング用に初めから備えられており、居住者のうち13戸が会員になっている。運営するのはマンションのフロントサービス会社「アスク」(本社・神奈川県藤沢市)だ。居住する68戸に対して駐車場は40台分。同社の担当者は「各戸分の駐車スペースが取れない立地のマンションでは有効と話す。

 子供の送り迎えなどで週3、4回利用するという主婦星野佳代子さん(39)は「出費は毎月1万5000円ぐらい。この辺は駐車場だけでも4万円以上しますし、燃料代も考えるとだいぶ安く済みます。マンションを選ぶ決め手の一つになりました」と打ち明ける。

 昨年11月から利用し、車の利用希望が他の会員とかち合って使えなかったのは2回だけで、ともに雨の日だったという。

 12月に完成する分譲マンション「芝浦アイランドケープタワー」(港区)でもカーシェアリングが売りものの一つだ。

 カーシェアリングは80年代後半に欧州で始まった。国土交通省所管の交通エコロジー・モビリティ財団によると、先進地スイスのモビリティ社は国内に1000カ所の拠点をもち、会員は03年時点で約6万人。日本では今年1月のまとめで北海道、千葉、埼玉、神奈川県、東京都など10都道府県57カ所で事業化されている。

 行政も後押しする。無人で車の貸し出しができるなど規制を緩和したカーシェアリング特区は試行に続き、今年4月からは全国どこででもできるようになった。11月からはカーシェアリングを利用するとポイントがたまり、バスの運賃として使える制度の実験が金沢市で始まる。これには経済産業省所管の独立行政法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」が補助金を出す。

 国交省新輸送サービス対策室は「さらに広がればセカンドカーの共有など車の台数抑制につながる」と期待している。

〔朝日新聞〕


■「再チャレンジ」は美しいが、実現は難しい【宋文洲コラム】

 企業の役員だったある知人が違法行為をしてしまいました。彼は即時に解任され、その後どこも雇ってくれません。相談を受けた私は「経営の才覚があるのだからこれを機に起業したらどうか」と勧めましたが、彼は顔を曇らせたままでした。

 「前科のある人は銀行が口座を作ってくれない」との彼の説明に私は憤慨しました。彼の罪はミスによる部分が大きいうえ、大きな対価を払って償いました。彼は罪を認め、刑罰を受け、対価を支払った時点で普通の市民に戻り、彼は全ての権利と自由を有するのです。

 自民党の総裁選に関連して、「再チャレンジ」という言葉が取り上げられています。でも、この「再チャレンジ」という言葉自体に違和感を覚えます。どうも一度失敗した人、罪を犯した人が「再び頑張るから過去を忘れて応援してよ」とチャレンジするようなニュアンスです。

 失敗しても罪を犯しても本人が失敗と罪を認識し、その責任を取った以上、その時点で普通の権利と自由と尊厳が回復されるのです。でも、再びチャレンジするのもしないのも本人の自由であり、どのような選択をしても周囲は普通の態度を取るべきです。

 一方、罪を犯しながら罪を認識しない人、罪の償いを拒否する人も残念ながら世の中に居ます。「再チャレンジ」はこのような人々に乱用されないように留意すべきです。

 わざわざ総理候補の安倍さんが「再チャレンジ」を政権構想に掲げるほど、日本社会が「前科」のある人に寛容ではないのは確かです。死んだ人の罪を許すことが文化というのですから生きている人の罪も許さないと本末転倒です。

 「恕(ゆる)す」という言葉は、「論語」などの儒教思想とともに日本社会に浸透しています。しかし、儒教のこの恕すはどこか立場の強い者が立場の弱い者にお情けをかける側面があります。許される人はいつまでも弱い立場でその「恩赦」に感謝しながらつつましく行動しないといけません。

 一方、許してあげた人達には「許してやったから成功したんだから偉そうにするんじゃないよ」という心理が働きます。これが日本の再チャレンジを阻害する最大の要因です。残念ながらこれは日本だけではなく、儒教文化圏の人達が皆このような心理背景を持っています。

 しかし、中国のように広大な国土と多くの異民族・異文化を抱えている国にいればこの儒教の束縛から物理的に逃れることが可能です。違う地域に行き、違う民族と付き合えば何もしなくても全てのリセットがかかります。かつてのオーストラリアがそのような土地であったように。

 これに対して日本は国土が狭いうえ、脱藩行為は厳罰の対象になっていたため、物理的に逃れる方法もありませんでした。村の論理と文化が発達し、「村八分」にされる恐怖と不安が村人の秩序と規律を保ってきました。「前科」のある人はいくらつつましく生きようとも逃れられません。「村八分」に居ることは罪と失敗の永久証明になります。いわゆる「許された罪人」の烙印です。

 「再チャレンジ」は美しい言葉ですが、実に深刻な文化的困難と心理的困難が伴います。「恕(ゆる)す」文化と「村八分」心理を克服しない限りはスローガンで終わってしまうと思います。しかし、「恕(ゆる)す」文化と「村八分」心理を克服するには「再チャレンジ」のような単独問題ではなく、もっと広い取り込みが必要でしょう。

 冒頭で述べた経営者の知人は結局、私も支援してようやく銀行に口座を開くことができました。幸いにして彼は今自分の会社で明るく働いています。しかし、五十歳代の彼には沢山の日本人の友人知人がいたのに誰も彼に手を貸しませんでした。情けを大切にするといわれた日本社会ですが、評判を落とした人に対して実に冷たいとつくづく思いました。

-筆者紹介-
宋 文洲(そう ぶんしゅう)
ソフトブレーン マネージメントアドバイザー
略歴
 1963年中国山東省生まれ。85年に北海道大学大学院に国費留学。天安門事件で帰国を断念し、札幌の会社に就職するが、すぐに倒産。学生時代に開発した土木解析ソフトの販売を始め、92年28歳の時にソフトブレーンを創業。98年に営業など非製造部門の効率改善のためのソフト開発とコンサルティング事業を始めた。00年12月に東証マザーズに上場。成人後に来日した外国人が創業した企業が上場するのは、初のケースとなった。05年6月東証1部上場。06年9月会長を退任し現職に。著書には「やっぱり変だよ日本の営業」「ここが変だよ日本の管理職」などがある。

〔日本経済新聞〕


2006.09.10

■年金見込額通知 50歳以上全員と35、45歳 来年度から

 社会保険庁は9日、年金の信頼回復策の一環として、厚生、国民両年金加入者への年金見込額の通知サービスを平成19年度から拡充する検討に入った。現在は50歳以上の希望者に限って照会に応じているが、これを希望の有無にかかわらず50歳以上全員に通知するほか、35歳と45歳も対象に加える考え。社保庁は20年度に「ポイント制」による本格的な通知システムを導入する予定だが、保険料不正免除問題で年金不信が強まったため、早急にサービス向上を図る必要があると判断した。

 年金を将来いくら受け取れるかの見込額については、人生設計に深く関係することから、国民の関心が強い。

 社保庁は現在、年金受給年齢が近づいた50歳以上の希望者に限って照会に応じている。拡充案では、本人が社保庁に照会を申し込まなくても、50歳以上の加入者全員に年金見込額を通知する。また、年金加入状況の通知を行う予定にしていた35歳と、さらに45歳にも見込額を通知する案を軸に調整を進めている。

 社保庁では、保険料の納付実績を点数化して見込額を一目で分かるようにするポイント制の導入を決め、20年4月からの実施に向けて準備を進めている。拡充案ではポイント制の前倒しも浮上したが、コンピューターシステムの修正費用が多額で、時間的な余裕もないことから、50歳以上に行っている照会サービスを充実させることになった。

 19年度中の実施を検討することになったのは、保険料不正免除問題で国民の年金不信を改めて招いたためだ。国民に年金見込額や年金加入記録を示すことで、信頼を少しでも回復させたいとの狙いがある。

 ただ、実現には予算が必要となるため、社保庁は「最終的には次期政権の判断」(幹部)としている。自民党総裁選に立候補し、次期首相就任が有力視される安倍晋三官房長官は「どれぐらい(保険料を)払い、将来いくらもらえるかを国民に通知する仕組みを、なるべく早く実行しなければならない」と主張している。

〔産経新聞〕


2006.09.09

■世界人口白書から〜日本を応援する女性達に理解を

 「きつい」「汚い」「危険」を意味する3K職場が敬遠されています。勤務条件が厳しい産科・小児科・脳外科などの希望者が減り、皮膚科や耳鼻科希望者が増えているといいます。看護師の世界も同様で、フィリピンなど途上国からの応援が求められています。しかしその陰で何が起こっているのか。

 9月6日グリニッジ標準時正午(日本時間午後9時)、国連人口基金から「世界人口白書2006」が世界同時発表されました。今年のテーマは「希望への道−女性と国際人口移動」。タイトルだけを見ても実感が沸きませんが、先進国の豊かさを支えている途上国の女性に向けられた期待と彼らを取り巻く厳しい現実が報告されています。「3Kは彼らに任せればいい」と考える前に、受け入れる側と提供する側の問題を知る必要がありそうです。

 医療の世界に限らず、途上国の女性達の姿を町のあちらこちらで見る機会が増えています。ぎこちない日本語を駆使しながら、居酒屋やスナックでウェートレスやホステスとして働く女性たち。ショーパブには欠かせない存在になっています。雇用主からしてみれば、単純労働者としては低賃金であるがゆえに魅力だという声をよく耳にします。日本の医療や介護が彼らによって支えられる日はそう遠くありません。

 今日、世界的にみて国際人口移動者全体のほぼ半数の49.6%は女性が占め、その数は9500万人にも上っています。しかし、女性移住者が出身国と受け入れ国双方の経済的・社会的安定にどれほど大きな役割を果たしているかを私たち日本人は知りません。

 世界人口白書では具体的にお金の流れについて次のように記述しています。

 「国外移住者からの出身国への送金は、2005年の推計で2320億米ドルにも達する。このうち1670億米ドルは途上国に送られており、途上国にとっては出身国への送金が政府開発援助(ODA)よりかなり大きく、外国からの直接投資につぐ外国資金源になっている。(中略)スリランカ人移住者の1999年の出身国への送金10億米ドルあまりのうち、女性の送金は62%を占めた。1990年代後半のフィリピンには毎年60億米ドル前後の送金があったが、その3分の1は女性によるものだった。」

 これらの送金が、自国の子どもの健康水準の向上にも寄与していると世界銀行は評価しています。医療分野での頭脳流失も顕著ですが、その一方で、自国の医療制度は崩壊し、資金、物資、備品、職員は慢性的に不足していると言います。医療の最前線にいる看護師の流失はさらに深刻です。自国では給料が低い、労働条件が悪いなどの理由から戦線を離脱し、2000年には看護学校を卒業した人の2倍もの看護師がガーナから出て行き、2年後ガーナ保健省は看護師の欠員を57%と推計しています。2003年、就労しているフィリピン人看護師の推定で85%が海外で働いています。先進国では少子高齢化が加速し、医療需要はますます高まっているわけですから、途上国からの医療支援に頼らざるを得ない状況が続いています。

 その一方で、移住には暗い側面も無視できません。人身売買の犠牲者という現代版の奴隷から家庭内労働における搾取に至るまで、何百万人もの女性移住者が危険に直面しています。家庭内労働者が暴行を受けた、レイプされた、酷使された、給料の支払いや休日、プライバシーを拒否された、医療を受けさせてもらえなかった、罵声(ばせい)を浴びせられ心理的虐待を受けた、パスポートを取り上げられた等々。時には死に至るケースだってないわけではありません。自国を離れ労働を提供しての結果がこれでは誰だってやり切れません。

 自国の女性たちが他国へ移動することを当然とするのではなく、貧困をなくし、ジェンダーの平等を推進し、開発を促進するために一層の努力を払うことが求められています。しかし、国際人口移動を求めざるを得ない受け入れ国にあっても、その貢献度の大きさや、彼らが自国に残している家族を支えている現実を再認識し、差別することなく働きやすい環境を提供することは当然です。どこで生まれても、どこで働いていても同じ人間であることを忘れることなく……。今後居酒屋で出会った“移動する女性たち”にやさしさと思いやりをもって接しようというきっかけを作ってくれたのが「世界人口白書2006」でした。

 「世界人口白書2006」を無料で配布しています(送料のみ希望者のご負担となります)。お問い合わせ先は(財)ジョイセフ世界人口白書係(電話03・3268・3150)。

〔毎日新聞〕


2006.09.08

■日本社会像、理想と予想に大きなギャップ 厚労白書


 「家族の支え合いに頼りたいが、実際にはそんな社会は来ない」―。15年後の日本社会像について、多くの国民が理想と現実に大きなギャップを持っていることが、川崎二郎厚生労働相が8日の閣議に報告した平成18年度版の厚生労働白書で分かった。

 白書が取り上げたのは、厚生労働省が1月に実施した15年後の日本社会についての理想と予想についてのアンケート調査。家族の在り方については55.6%が「家族との支え合いに頼りたい」と希望しているにもかかわらず、同時に65.5%がそういう社会にはならないと予想。近所付き合いは84.5%が「盛んになってほしい」と望んでいるものの、同時に85.7%が希薄になると予想した。

 仕事と余暇のバランスでも、77.3%が「余暇中心」を理想とし、「仕事中心」の21.6%を大きく上回ったが、61.6%が実際には仕事中心社会になると予想するなど、いずれも理想と実際に到来する社会のイメージに大きな乖離(かいり)があることが浮き彫りになった。

 白書は、こうした国民意識を重視。社会保障制度の見直しに引き続き取り組む必要性を指摘するとともに、働き方を見直すことで家族や地域社会の一員として過ごす時間を増やし、職場と家族と地域をつなぐ新しい「支え合いの循環」の実現を提唱している。

〔産経新聞〕


■中国、環境汚染での経済的損失は7・5兆円

 【北京=寺村暁人】中国国家環境保護総局と国家統計局は7日、2004年の同国の環境汚染などによる経済的な損失が計5118億元(約7兆5000億円)にのぼるとする研究報告書を公表した。

 中国が全国の汚染実態を金額に換算して発表するのは初めて。損失は同年の中国の国内総生産(GDP)の約3・05%に相当し、深刻な環境汚染の実態が裏付けられた。

 中国では、中央政府が環境保護を重視する政策を打ち出しているものの、経済成長を求める地方政府による開発が依然として続いている。報告書公表は、環境汚染によるコストを示すことで、地方にブレーキをかける狙いがあると見られる。

 報告書によると、水質汚染による損失が2862・8億元と全体の55・9%を占めたほか、大気汚染が2198億元、固体の廃棄物などが57・4億元の損失だったという。仮に現在の技術水準でこの汚染を処理すれば、初期投資だけで1兆800億元(約15兆8500億円)、維持管理などにさらに毎年2874億元が必要になると試算している。

〔読売新聞〕


2006.09.07


■世界人口が65億人突破、人身売買の問題深刻化

 国連人口基金(UNFPA、本部・ニューヨーク)は6日、2006年版の世界人口白書で、今年7月時点で世界の人口が65億4030万人を突破したとする推計値を発表した。

 昨年より7560万人増えて、過去最高となった。

 日本は10万人増の1億2820万人で、昨年と同じ10位。また、2050年には世界人口が90億7590万人に達すると推計している。

 今月中旬の国連総会時に「国際人口移動と開発に関する政府高官会議」が開かれるため、白書では、途上国の人口増と先進国の少子高齢化に伴う人口移動問題に焦点を当てている。

 仕事や結婚による移動、難民などを含む国際人口移動者は05年で1億9100万人。国外居住者から本国への送金は2320億ドルで、うち1670億ドルは途上国に送られている。

 一方、人身売買や暴力、搾取の危険も高まっており、毎年60万人から80万人が国境を超えて売買され、うち80%が少女を含む女性と推計。また、医療体制が弱い国ほど医療従事者の「頭脳流出」が深刻だと指摘している。

〔読売新聞〕